he felt like one of the trained mice in a fair who runs round and round upon the little wheel, getting nowhere in a tremendous hurry.
伝説5巻p298
そのうち、かれは縁日で見せ物になるネズミのような気分になってしまった――小さな車輪に乗ってぐるぐるまわる訓練を受けた、いくら急いでもどこにも行けないあのネズミのような。
***
タニスちゃんはあわれな見せ物と思ってるようですが、実際にハムスターやリスを飼って観察していると、彼らはあれを結構楽しんでるみたいですよ。お外(と言っても部屋の中ですが)をさんざん探検した後、ケージに戻ったかと思うと回し車にまっしぐら、とか。
“My spies fly on swift wings.”
“if they fly on wings at all,”
「わたしのスパイたちはすばやい翼を持っておりますのにね」
「そもそもそいつらが翼で飛ぶものならな」
The young elf certainly appeared to be someone who could be relied upon to perform with cool courage in a tight spot. Unfortunately, just who he would perform for was open to doubt.
この若いエルフは窮地にあっても冷静で、肝ったまのすわった行動ができるように思えた。ただ残念なことに、かれが仕えている人物が疑惑を招きやすいのだ。
Tanis rubbed his forehead. How confusing this was! How much easier it had been back in the old days--he sounded like someone’s grandfather!--when good and evil had been clearly defined and everyone knew which side they were fighting for or against.
タニスは顔をこすった。なんてややこしいのだろう! 昔はものごとがなんと簡単だったことか――まるで誰かのお祖父さんみたいな口調だ!――善と悪がはっきりとわけられ、自分がどちらの側に与していて、どちらの側が敵なのか誰もが知っていたあのころは。
“He’s winning?” Tanis stared at Dalamar incredulously.
“You have always underestimated him,” Dalamar said with a sneer.
「レイストリンは勝っているのか!」タニスは信じられないというようにダラマールを見つめた。
「あなたはいつもレイストリンを過小評価してきましたね」ダラマールは冷笑まじりに言った。
“I told you, he is now strong, powerful, the greatest wizard who has ever lived. Of course, he is winning! But at what cost...at what great cost.”
「申したでしょう、かれはいまひどく強くなっているのです。これまで生を受けたなかでも最大の魔法使いなのですよ。もちろん、勝っていますとも! ですが代償を……多大な代償をはらっています」
Tanis frowned. He didn’t like the note of pride he heard in Dalamar's voice when he talked about Raistlin. That certainly didn’t sound like an apprentice who was prepared to kill his Shalafi if need arose.
タニスは眉をひそめた。ダラマールがレイストリンの話をするとき、その声にあらわれる誇らしげな調子が気にくわなかった。とても必要が生じれば“シャラーフィさま”を殺す覚悟をした弟子の声とは思えなかったからだ。
“Too much is your concern!” Tanis snapped. “Give me a charm! Let me inside the Tower! I can deal with her--“
「きみには荷が重すぎる!」タニスはぴしゃりと言った。「おれに護符をくれ! おれを<塔>のなかに入れてくれ! おれがキットの相手をする――」
“Oh, yes.” Dalamar returned, amused, “I know how well you deal with her in the past.”
「おや、そうですか」ダラマールはおもしろがるように言い返した。「あなたがかつて、どんなに上手く彼女をあしらったか知っていますよ」
“Besides, you have forgotten one thing--Soth’s true purpose in this. He wants Kitiara dead. He wants her for himself. He told me as much.”
「それから、ひとつお忘れです――ソス卿の真の目的はここにあるのです。ソス卿はキティアラに死んでもらいたがっています。キティアラをわがものにしたいと、ソス卿はわたしにそう言いました」
Feeling suddenly chilled to the very soul, Tanis could not reply.
不意に魂の芯まで凍りついたような気がして、タニスは返事ができなかった。
“I cannot stay long, our fate teeters on the edge of a knife’s blade. But I brought you this.” Reaching into a black velvet pouch hanging at his side, he took out a silver bracelet and held it out to Tanis.
「長居はできません。わたしたちの運命はいま、ナイフの刃の縁でぐらついているのです。これを渡しにきました」ダラマールは腰にさげている黒い天鵞絨の小袋に手を入れ、銀の腕輪を差し出した。
“It makes the one wearing it resistant to magic.”
「それをつけている者は魔法に抵抗できるようになります」
“Yes, Half-Elven, thank me when you return.”
「ええ、ハーフ・エルフどの、もしも帰ってこられたら、わたしに感謝してください」
“Why me?”
「どうしておれに?」
“It knows one of its own.”
「その腕はそれを持つべき人物を知っています」
Dalamar paused, his brows came together in irritation at this delay. Tanis felt the young elf’s arm tense. He’s frightened, Tanis realized suddenly.
ダラマールはちょっとためらった。引きとめられたことにいらだつように眉が寄る。この若いエルフの腕が緊張するのをタニスは感じた。かれはおびえているのだ――不意にタニスはそうさとった。
But even as this thought crossed his mind, he saw Dalamar regain control of himself. The handsome features grew calm, expressionless.
だがそう思った瞬間、ダラマールがふたたび立ちなおったのがわかった。整った容貌がいっそう冷ややかに、無表情になる。
“The cleric, Lady Crysania, has been mortally wounded. She managed to protect Raistlin, however,. He is uninjured and has gone on to find the Queen.”
「僧侶レディ・クリサニアが致命傷を負いました。それでも彼女はレイストリンを守りぬきました。レイストリンは無傷で、<女王>を見つけにゆきました」
Tanis felt his throat constrict. “What about Crysania?” he said harshly. “Did he just leave her to die?”
タニスは喉が締めつけられるのを感じた。「クリサニアは?」ざらついた声でたずねる。「レイストリンはクリサニアを見殺しにしたのか?」
“Of course.” Dalamar appeared faintly surprised at the question. “She can be of no more use to him.”
「もちろんです」この質問にダラマールは少し驚いたようだった。「彼女はもはやレイストリンに必要ないのですから」
***
順番は前後しますが、ここで浮揚城塞の脅威とパランサスの運命を知ったわれわれの騎士団長グンター卿、パランサスの君主アモサス卿、ローラナとともに戦った若いマーカム卿、それぞれの反応をご紹介しておきましょう。
“I know what you’re thinking, Tanis,” Amothus said finally, a break in his tone.
「きみが何を考えているかはわかっているよ、タニス」ようやく、アモサス卿は口を開いた。声が割れていた。
“You’re thinking of all those who died and suffered in the last war while we in Palanthas remained untouched, unaffected.”
「それからパランサスにいるわれわれがなんの被害も影響も受けずにいたときに、あの最後の戦で死んだり苦しんだりした人々のことを」
“To the Abyss with your elven blood,”
“And may the gods go with you,” Gunthar added in a low, choked voice.
「そのエルフの血とともに<奈落>へ落ちろ」
「きみの上に神々のご加護があるように」グンター卿は低い涙声でつけ加えた。
He’s not as drunk as he's letting on, Tanis decided. or as he wishes he could be.
泥酔しているように見せてはいるが、それほど酔っ払ってはいないな――タニスはそう判断した――泥酔したいと願ってはいるかもしれないが。
“Another brandy, Charles,” said Sir Markham, holding out his glass once again. “A pledge, gentlemen.” He raised his glass.
「もう一杯ブランディーをくれ、チャールズ」マーカム卿がまたもた杯をさしだした。「乾杯しましょう、みなさん」そして、杯を持ちあげる。
“Here’s to trying....Rhymes with dying.”
「努力に乾杯……臨終の歌に」
***
5巻をちょうど7月で終わらせたかったので、少々詰めました。マーカム卿の乾杯は実は十二章のラストなのですが、締めにふさわしい洒落た台詞だと思います。
さて、6巻には何回かけますことか。
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