2016年8月23日火曜日

伝説6巻p178〜《gift》

TEST OF THE TWINS p296
The battle is over, he realized numbly. It has ended. And we have won. Victory. Hollow, wretched victory.

伝説6巻p178
 戦いは終わったのだ。痺れるように、タニスはそうさとった。戦いは終結した。勝ったのはおれたちだ。おれたちが勝利を得た。むなしい、みじめな勝利を。

Leaning against the window, Tanis continued watching the citadel, which had acquired a bronze dragon as honor guard. He felt his bleakness and grief and fear ease and the tension in his body relax. No matter what happened in the world or on the planes beyond, some things--kender among them--never changed.

 窓に寄りかかり、タニスは城塞をじっと見まもった。儀仗兵がわりに一頭の青銅竜がつきそっている。憂鬱さと悲しみと不安がやわらぐのが感じられ、身体の緊張が解けた。この世界に、またそれを超える異界に何が起ころうと、絶対に変わらないもの――そのなかにはケンダーが入っている――もあるのだ。

***

 青銅竜!のちのタッスルの台詞で、これはキルサーであることがわかりました。良かった良かった。スカイアとの決着はどうなったのでしょうね。…もしかしたら、キティアラの死を知ったスカイアが、戦場放棄してしまったのかも知れません。


“What do you know of him?”
“What decision will he make? The last I saw he was a drunken buffoon, but his experiences appear to have changed him.”

「あなたはキャラモンのことをご存じでしょう?」
「キャラモンはどちらを選ぶと思いますか? わたしが最後に見たときは、キャラモンは酔いどれの道化者でした。ですが、いまのかれはいろいろな経験ですっかり変わってしまったようです」

“I don’t know,” Tanis said, troubled, talking more to himself than to Dalamar. “The Caramon I once knew was only half a person, the other half belonged to his brother. He is different now. He has changed.”
“Poor man. I don’t know...”

「おれにはわからん」タニスは悩ましげに言った。ダラマールにというよりは、自分自身に言いきかせているかのようだった。「おれの知っているキャラモンは半人前の人間にすぎなかった。残りの半分はやつの弟のものだった。だが、いまはちがっている。キャラモンは変わった」
「かわいそうなやつだ。おれにはわからん……」

Looking into the Portal, Tanis saw Raistlin. He saw the final meeting between the twins.

 タニスは<扉>をのぞきこんだ。レイストリンが見える。タニスはいま、この双子の最後の出会いを見ていた。

Tanis never spoke to anyone of that meeting. Though the visions seen and words heard were indelibly etched upon his memory, he found he could not talk about them.

 この最後の出会いのことを、タニスはけっして、誰にもしゃべらなかった。目にした光景も、耳にした言葉も克明に記憶に刻みつけられ、けっして忘れられないにもかかわらず、誰にもその話をすることができなかった。

To give them voice seemed to demean them, to take away their terrible horror, their terrible beauty.

 口に出してしまうとその価値が失われてしまうのではないか、そのすさまじいまでの恐ろしさ、すさまじいまでの美しさがとりはらわれてしまうのではないか、と思えたのだ。

But often, if he was depressed or unhappy, he would remember the last gift of a benighted soul, and he would close his eyes and thank the gods for his blessings.

 だが時おり、落ち込んだときや悲しいとき、かれは闇に包まれた魂の、この最後の贈り物のことを思いだす。そして目を閉じて、レイストリンが与えてくれたこの祝福を、神々に感謝するのだ。

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