One person only rose to speak Elistan’s eulogy, and it was deemed fitting by everyone that she do so. Not only because she was now taking his place--as he had requested--as head of the church, but because she seemed to the people of Palanthas to epitomize their loss and their pain.
伝説6巻p196
一人の女性が立ちあがって、エリスタンへの頌徳の言葉を述べた。それをするのには、その女性がふさわしいと誰もが認めるところであった。それは彼女がエリスタンの地位をついで――エリスタンが望んだとおりに――教会の長になっているからだけではなく、パランサスの人々にとって、自分たちの損失と痛みを集約した人物であるからだった。
Crysania stood before them that morning, her eyes looking straight into the sun she would never see again. Its rays glistered in her black hair that framed a face made beautiful by a look of deep, abiding compassion and faith.
その朝、クリサニアは人々の前に立ち、二度とものを見ることのできない目でまっすぐ太陽を見すえた。陽光が顔を縁取る黒髪を輝かせた。その顔は変わらぬ深い憐憫と信仰を宿した表情で美しく輝いていた。
“As I stand in darkness,” she said, her clear voice rising sweet and pure among the songs of the larks, “I feel the warmth of the light upon my skin and I know my face is turned toward the sun.”
「闇の中に立っていると」クリサニアの澄んだ声が、ヒバリたちの歌声の中に甘美で純粋な響きをあげた。「肌にあたる光の暖かさを感じます。そして自分の顔が太陽の方を向いているとわかります」
“But if you who can see look too long in the sun, you will lose your sight, just as those who live too long in the darkness will gradually lose theirs.”
「でももし、目の見えるあなたがたが太陽を長いあいだ見つづけていると、あなたがたの視力は失われてしまうでしょう。また同じように、闇の中で長く暮らしつづけた人々も、少しずつ視力を失っていきます」
“This Elistan taught--that mortals were not meant to live solely in sun or in shadow, but in both.”
「このことをエリスタンは教えてくれたのです――定命の人間は陽の光の中だけに、もしくは闇の中だけで暮らすべきではなく、その両方の中で暮らすべきなのだ、と」
“For though some might choose to walk the paths of night, looking to the black moon to guide them, while others walk the paths of day, the rough and rock-strewn trails of both can be made easier by the touch of a hand, the voice of a friend.”
「夜の小径を歩くことを選び、黒い月を見あげて道しるべにする者もいれば、昼の小径を歩くことを選ぶ人たちもいます。どちらも険しく岩だらけの細道ですが、手と手のふれあいや、友の声によって歩きやすくすることができます」
“The capacity to love, to care, is given to us all--the greatest gift of the gods to all the races.”
「他人を愛する力、気遣う力はわたしたち全員に与えられた能力です――神々からあらゆる種族に与えられた最大の賜物なのです」
***
「神々から与えられた最大の賜物」
そう思うことに疑問を投げかけたのは、ドラゴンランスではありませんがやはりファンタジー小説でした。マイクル・ムアコック『エルリック・サーガ』の「この世の彼方の海」収録の「過去への旅」。邪神アリオッチに翻弄される主人公たちの運命に涙したのち、まだキリスト教徒の端くれだった私は、自分の神が慈悲深い存在であることをありがたく思い、そして次の瞬間戦慄しました。
人が慈悲の心を持つのは、神様が与えてくれたからだ、という考えを受け入れることは、もし気まぐれな神様に創造されていたなら、人は血も涙もない存在でありえたのだということを受け入れることでもある、と。
それはとても恐ろしい考えでした。しかし気づいてしまった以上、以前のように神を信じることは、それ以上に恐ろしいことでした。生物学を、進化論を学ぶために信仰を捨てることに、まだ迷いがあった私への最後の、決定的な一押しでした。
そして生物学を学んだ私がどんな境地に達したかは、「囚人のジレンマの語るもの」や「quia pius es」などで長々語っておりますので気が向いた方はどうぞ。
本文に戻ります。
Crysania gripped his hand tightly, drawing him near to her.
“Raistlin is at peace, Caramon,” she said softly.
クリサニアはぎゅっとかたくキャラモンの手を握りしめ、自分のほうに引き寄せた。
「レイストリンは安らかに憩っていますわ、キャラモン」穏やかに言う。
He looked at her, and she--aware of his scrutiny though she could not see it--smiled, her pale skin tinged with the faintest rose. Seeing that smile, and seeing the tears that fell around it, Caramon drew her close, in turn.
キャラモンはクリサニアを見つめた。クリサニアは――目は見えなかったが、かれの視線を感じとって――にっこりと微笑んだ。青白い肌がほんのりと薔薇色を帯びた。その笑みを見て、また、そこにこぼれた涙を見て、今度はキャラモンのほうが彼女を引き寄せた。
“I’m sorry. I wish I could have spared you this--“
“No, Caramon,” she said softly. “For now I see. I see clearly, as Loralon promised.”
「すみません。あなたをこんな目にあわせてしまって――」
「いいえ、キャラモン」クリサニアは静かに言った。「いま、わたしには見えるのです。ロラローンが約束してくれたように、はっきりと見えるのです」
“Most of us walk in the light and the shadow, Tasslehoff,” she said, “but there are the chosen few who walk this world, carrying their own light to brighten both day and night.”
「わたしたちのほとんどは光と影の中を歩むのよ、タッスルホッフ。でもその中には、みずから光を運んで昼も夜も輝かせながらこの世界を闊歩する、ごくわずかな選ばれた人々がいるわ」
“I need not ask Paladine’s blessing on you, for I know you are one of his close, personal friends....”
「あなたにパラダインのご加護を願う必要はないわね。あなたはパラダインのごく親しい内輪の友人の一人なのだから……」
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