Lady Crysania.
He hoped, for her sake, she had died quickly...never knowing....
伝説6巻p142
レディ・クリサニア。
願わくば、その死がすみやかなものでありましたように……どうか何も知ることなく……
But he recognized it--a wooden stake. The kind...the kind they had used in the old days to burn witches!
だが、キャラモンにははっきりとわかった――木の杭だ。まるで…まるで、はるか昔の時代に魔女の火あぶりに使われていたような!
Memories flooded back. He could see Raistlin tied to the stake, see the heaps of wood stacked about his brother, who was struggling to free himself, shrieking defiance at those whom he had attempted to save from theur own folly by exposing a charlatan cleric.
さまざまな記憶がいっせいに押しよせてきた。その杭にレイストリンが縛りつけられている。弟のまわりには薪が積みあげられている。レイストリンは自由になろうともがきながら、人々に向かって傲然と叫びたてている。いんちき僧侶の素行をあばくことで、人々を愚行から救おうと。
“We got there just in time, Sturm and I,”
「危ういところで駆けつけたのだ。スタームとおれが」
The robes it wore were white. And then he knew.
“Crysania,”
その人物がまとっているローブは白かった。そして、キャラモンにはわかった。
もちろん、考えていたとおりだったのだ……
「クリサニア」
She opened her eyes and turned her head toward the sound of his voice, but her eyes did not fix on him. They stared past him, and he realized she was blind.
クリサニアは目をあげ、声のした方に頭をめぐらせた。だが、その目はキャラモンの上を素通りする。自分の背後を見つめる様子から、キャラモンはクリサニアの目が見えないことを知った。
“Raistlin?” she whispered in a voice filled with such hope and longing that Caramon would have given anything, his life itself, to have confirmed that hope.
「レイストリン?」クリサニアのささやきには希望と切望がこめられていた。その希望をかなえてやるためなら何も惜しくない――この生命さえも――とキャラモンが思うくらいに。
“It is Caramon, Lady Crysania.”
“I entered the Portal, Crysania”
「キャラモンです、レディ・クリサニア」
「おれは<扉>を抜けてきたんです」
“I have been a fool, Caramon,”
“but I am paying for my folly. I wish...I wish I knew.... Has harm come to...to anyone...other than myself? And him?” The last word was almost inaudible.
「わたしは本当に愚か者でした、キャラモン」
「そしていま、その愚かさの報いを受けているのです。わたしは……こうなることがわかっていたら……あの……わたし以外の誰かが……危害を被っているのでしょうか? それに、あの人は?」最後の言葉はほとんど聞きとれなかった。
“Lady--“
but Crysania stopped him. She could hear the sadness in his voice.
「レディ――」
だがクリサニアはかれをとどめた。キャラモンの声音の中の悲しみを聞きとったのだ。
“Of course. I understand!”
“That is why you have come. I’m sorry, Caramon! So sorry!”
「もちろんそうでしょうとも。わかっています!」
「だから、あなたはやってきたのですね。ごめんなさい、キャラモン! 本当にごめんなさい!」
***
自らも傷ついた瀕死の状態で、キャラモンにひたすら詫びるクリサニア。
レイストリンに対しても(聞いていないとはいえ)「許して……」
本国の読者はどのように受け止めたのでしょうね。あまりに痛ましい印象を受けたか、それともあり得ないと感じた人もいたかもしれません。何か事件が起こった時、えてして被害者の側が謝罪してしまったり、社会がそれを要求したりする国に住む我々の方が不思議なのです、本当は。
それでも、あの「許して……」には涙が出ました。エントリ当日も言葉にできませんでした。「ライブ・ア・ライブ」最終編の心のダンジョンで、あの人の言葉を聞いた時にも同じことを思ったものです。ごめんね、ごめんね、許してね、必ず彼に伝えるから、と。
“There is nothing to be sorry for, my lady,”
“You loved him. If that is your folly, then it is mine as well, and I pay for it gladly.”
「あやまることはありませんよ、レディ」
「あなたはレイストリンを愛したのです。それを愚かなことだというのなら、おれだって同じです。おれは喜んで報いを受けますよ」
“If that were only true!”
“But it was my pride, mi ambition, that led me here!”
「それが正真正銘の愛ならそうでしょう!」
「でも、わたしがここまでやってきたのは、おのれの自尊心のため、おのれの野望のためだったのです!」
“Was it, Crysania?”
“If so, why did Paladine grant your prayers and open the Portal for you when he refused to grant the demands of the Kingpriest? Why did he bless you with that gift if not because he saw truly what was in your heart?”
「そうでしょうか、クリサニア? もしそうなら、パラダインはなぜあなたの祈りを聞きとどけ、あなたのために<扉>を開いたのでしょうか? 神官王の要請は拒んだというのに? もし、あなたの心の中を正しく見きわめたのでなければ、どうしてあのような贈り物とともにあなたを祝福したのでしょうか?」
“Paladine has turned his face from me!”
「パラダインはもうわたしから顔を背けてしまわれたのです!」
“No,”
“he is here. He holds me. I see him so clearly....”
「ちがうわ」
「パラダインはここにいてくださるわ。わたしを抱いていてくださる。こんなにはっきりとお姿が見える……」
Suddenly the air around him split and cracked. Lightning stabbed from the sky, lightning such as he had never seen, Thousands of purple, sizzling branches struck the ground, penning him for a spectacular instant in a prison whose bars were death.
突然、周囲の空気が引き裂かれ、ひび割れた。これまで見たこともないような稲妻が空から刺しこんでくる。紫色をした無数の灼熱の枝が地面を貫き、ほんの一瞬で死の鉄格子でできた牢獄に大男を閉じこめた。
“”He’ll kill you, won’t he?”
“Yes,” Caramon answered steadily. “But not before he himself falls.”
「あなたはレイストリンに殺されるのでしょう?」
「そうです」キャラモンは落ち着きはらった声を出した。「でも、その前にレイストリン自身が倒れていることでしょう」
“I’ll wait for you!”
「あなたを待っていますわ!」
He had been prepared to condemn himself to death., he was prepared to condemn his brother. It had all been so simple!
But--could he condemn her?...
自分に死を宣告する覚悟はできていた。弟にそれをする覚悟も。何もかも、ごく簡単なはずだった!
だが――クリサニアに死を宣告することができるだろうか?
Turning, he saw Raistlin.
振り返ると、レイストリンがいた。
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