“There is no escape!” laughs my executioner, and I know it is myself speaking! My laughter! My voice!
伝説3巻p339
「逃げるすべはないぞ!」死刑執行人が笑う。しゃべっているのはぼく自身だ! ぼくの笑い声! ぼくの声!I can hear his black robes rustling around his ankles, I can hear the blade being lifted...lifted....
執行人の黒いローブがくるぶしにまとわりつく衣ずれの音、刃の振りあげられる音……刃の振りあげられる音が……“Raist! Raistlin,” Wake up!”
「レイスト! レイストリン! 起きろ!」
Strong hands held him firmly, a familiar voice, warm with concern, blotting out the whistling scream of the executioner’s falling axe blade....
がっしりした手がしっかりとかれをつかむ。聞き慣れた声。心配そうなその声の暖かさが、死刑執行人の振り下ろす風を切るような斧の刃の音を遮ってくれたのだ……
“Caramon!” Raistlin cried, clutching at his brother. “Help me! Stop them! Don’t let them murder me! Stop them! Stop them!”
「キャラモン!」レイストリンは叫び、兄にすがりついた。「助けて! やつらを止めてくれ! ぼくを殺させないで! 止めて! やつらを止めて!」
“Shhhh, I won’t let them do anything to you, Raist,” Caramon murmured, holding his brother close, stroking the soft brown hair. “Shhhh, you’re all right. I’m here...I’m here.”
「よしよし、おまえに手だしはさせないよ、レイスト」キャラモンは言い、弟をしっかりと抱きしめた。やわらかな茶色の髪の毛をなでてやる。「さあさあ、もう大丈夫だよ。おれがいる……おれがいるさ」
Laying his head on Caramon’s chest, hearing his twin’s steady, slow heartbeat, Raistlin gave a deep, shuddering sigh. Then he closed his eyes against the darkness and sobbed like a child.
キャラモンの胸に顔を埋め、双子の兄のしっかりした心臓の鼓動がゆっくり打つのを聞きながら、レイストリンは胸の底から顫える吐息をついた。それから目を閉じて闇を閉めだし、子どものように泣きじゃくった。
***
かれらは、あいつが子供のころ夜中に悲鳴を上げて飛び起きるのを聞いたことがないんだ。戦記5巻p345〜、影絵のシーンが思い出されます。ずっとこうだったんですね。鮮血海で別れるまでずっと。
“Ironic, isn’t it?”
“The most powerful mage who has ever lived, and I am reduced to a squalling babe by a dream!”
「皮肉なもんだね、ええ?」
「史上最強の魔法使いともあろうものが、夢におびえて赤ん坊みたいに泣きわめくんだから!」
“So you’re human,”
“You said it yourself.”
「そりゃ、おまえが人間だからさ」
「おまえが自分でそう言ったじゃないか」
“Yes...human!”
「そう……人間なんだ!」
Your brother intends to challenge the gods! He seeks to become a god himself!
『そなたの弟は神々に挑むつもりなのだ! 自分自身が神になろうとしているのだ!』
But even as Caramon looked at his brother, Raistlin drew his knees up close to his body, rested his hands upon his knees, and laid his head down upon them wearily.
だが今キャラモンが見ている弟は、膝を引き寄せ、両手をそこにのせてぐったりと頭を垂れている。
Feeling a strange choking sensation in his throat, vividly remembering the warm and wonderful feeling he had experienced when his brother had reached out to him for comfort, Caramon turned his attention back to the water.
弟が慰めを求めて自分に手を差しのべてきたときの暖かなうれしさが鮮やかによみがえってきた。キャラモンは息がつまるような奇妙な感覚を覚え、注意を弟のほうに戻した。
***
膝を抱えてぐったりと座るレイストリンとその駄目な兄。戦記の頃ですら、ここまで駄目な描写はあったでしょうか。いや、盲目だったあのころよりも、ある程度弟のことがわかってきた現在だからこそ、いっそう駄目さが際立つのかもしれません(駄目って3回言った)。
“Goblins!”
「ゴブリンだ!」
Gripping his sword, he and his brother exchanged glances. The years of darkness, of estrangement between them, the jealousy, hatred--everything vanished within that instant. Reacting to the shared danger, they were one, as they had been in their mother’s womb.
剣をつかみ、弟と目くばせを交わす。この一瞬、二人のあいだにあった長年のよそよそしい確執が、嫉妬が、憎悪が――すべて消えさった。ともに危険に直面し、二人は母親の胎内でそうだったように、ひとつになっていた。
Caramon scowled. “I’ll take it alive!” He indicated this with a gesture of his huge hand wrapping itself around an imaginary goblin neck.
キャラモンは渋い顔をした。「一匹生け捕りにしてやろう」そう言いながら、キャラモンは大きな手でゴブリンの首を絞める手つきをして見せた。
Raistlin smiled grimly in understanding. “And I will question it,” he hissed, making a gesture of his own.
レイストリンは了解したというようにすごみのある笑みを浮かべた。「尋問ならこちらがするよ」声を殺して言い、自分なりの手つきをした。
“Wait here!” Caramon signed.
A rustle of his black hood was Raistlin’s response.
「ここで待ってろ!」キャラモンが合図した。
レイストリンの返事は黒いフードの衣ずれの音だった。
***
どなたか、ハンドサインジェネレータで「マジェーレ兄弟のハンドサイン」作ってくれませんか。
「生け捕りにしてやろう」
「尋問ならこちらがするよ」
「ここで待ってろ」などなど。
A horrible shriek rang through the night, followed by a frightful yelling and thrashing sound, as if a hundred men were crashing through the wilderness.
夜気をつんざいて、恐ろしい絶叫が響きわたった。そのあとにぞっとするような叫び声と鞭を打つような音が続く。まるで百人ほどの人間が原野を突進して行くような音だ。
“Raist! Help! Aiiihh!”
「レイスト! 助けてくれ! うわああっ!」
Racing through the woods, the archmage ignored the branches that slapped his face and the brambles that caught at his robes.
大魔法使いは枝が顔を打つのも、ローブの裾が茨にひっかかるのもかまわず、森のなかを突っ走った。
“Ast kiranann Soth-aran/Suh- kali Jalaran.”
「アスト・キラナン・ソス−アラン/スー・カリ・ヤララーン」
クリン最強の魔術師という肩書&年齢と行動のギャップ。意外すぎるけど誰にでもある弱さだからこそ、愛おしさ倍増です。
返信削除キャラモンが駄目兄になるのも、頷けます。
泣きじゃくる最強の魔法使い、爆笑する最強の魔法使い、熱い薬湯をふーふーしながら飲む最強の魔法使い、フードかぶってすやすや眠る最強の魔法使い、もういちいちたまらないですね。キャラモンはよく頑張った。
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