You know me well my brother. the blood that flaws in our veins speaks louder than words sometimes.
伝説4巻p142
『ぼくのことはよくわかっているでしょう、兄さん。ぼくたちの血管に流れる血は、時には言葉以上に雄弁に語りますからね』
I have fought it for one purpose only, and that is to reach the Portal. These fools will carry me that far. Beyond that, what does it matter to me whether we win or lose?
『ぼくがこの戦をしたのはただひとつの目的のため――<扉>に到達するためなのです。ここにいる愚か者たちは、ぼくをそこまで連れていってくれることでしょう。その先は、わが軍が勝とうが負けようが、ぼくになんの関係があります?』
I have allowed you to play general, Caramon, since you seemed to enjoy your little game.
『ぼくは兄さんに将軍ごっこをさせてあげたんですよ、キャラモン。このささやかな遊びが気に入ってたみたいでしたからね』
“I’ll tell them,” Caramon said forcing the words put through clenched teeth. “I’ll tell them the truth!”
「みんなに言ってやる!」キャラモンはくいしばった歯のあいだから、言葉を押しだした。「みんなに本当のことを言ってやる!」
“Tell them what? That you have seen the future? That they are doomed?”
『何を言うのです? 未来を知っていることを? みな死ぬ運命にあるということを?』
All he could think of at that moment, was Raistlin ...laughing with him by the tree...Raistlin holding the rabbit...That camaraderie between them had been real. he would swear it!
その瞬間、考えることができたのはレイストリンのことだけだった……木のそばでかれと一緒に笑っているレイストリン……うさぎを抱いているレイストリン……二人のあいだのあの友愛意識は本物だった。それは誓って言えた!
Ad yet, this, too, was real. Real and cold and sharp as the blade of a knife shining in the clear light of morning.
だがこちらのレイストリンもまた本当の姿なのだ。朝の澄んだ光のなかできらめくナイフの刃のように、なまなましく、冷たく、鋭い。
And, slowly, the light from that knife blade began to penetrate the clouds of confusion in Caramon’s mind, severing another of the ties that bound him to his brother.
ゆっくりと、そのナイフの刃が放つ光がキャラモンの錯乱した頭の霧を貫き、双子の弟と結びつけていた絆を断ち切った。
The knife moved slowly. There were many to ties to cut.
The first gave in the blood-soaked arena at Istar, Caramon realized. And he felt another part as he stared at his brother in the frost-rimed courtyard of Pax-Tharkas.
ナイフはゆっくりと動いていった。断ち切らねばならない絆がたくさんあったのだ。
まず最初は、イスタルの血に濡れた闘技場だ。キャラモンはそれをさとった。そして、パックス・タルカスの霜の降りた中庭で弟を睨みつけながら、ほかの部分も手探りしていた。
***
日本語の「絆」というと、助けあったり守りあったりする良い関係を感じさせます。しかしここではイスタルの闘技場での、変わり果ててしまった愛しい弟を殺す決意も「絆」と表現されています。原文では”ties”、良い意味もあれば、束縛やしがらみ、執着といったマイナスの意味も併せ持つ言葉です。
「イスタルではおまえを殺してやりたかった」と言いながら、その気持ちの整理もつかないままに、弟の(レアな)思いの表現に一喜一憂していたキャラモンが、ここにきてついにレイストリンを正面から見据えました。どちらのレイストリンも本物であり、いくら近しくとも、自分とは違う人間なのだと。
実にきわどいタイミングでした。ここでキャラモンが独立していなかったなら、次次回(予定)のレイストリンの懇願を聞いてしまったに違いないのですから。ゴブリンの野営地や、タルシスの宿屋のときと同じように。
“It seems I have no choice,”
“None,”
「選択の余地はないようだな」
「まったくね」
“Open the gates!”
Pushed by eager hands, the gates swing, open. Casting a final glance around to see that all was in readiness, Caramon’s eyes suddenly encountered those of his twin.
「門を開け!」
熱のこもった手に押され、門が開いた。最後に一瞥して全員準備が整っていることをたしかめていたとき、キャラモンの目は不意に双子の弟の目と合った。
Raistlin sat upon his black horse within the shadows of the great gates. He did not move nor speak. he simply sat, watching, waiting.
レイストリンは大きな門の陰のなか、黒馬の背に乗っていた。動きもせずしゃべりもしない。ただじっと座って見まもり、待ち受けている。
For as long as it took to draw a shared, simultaneous breath, the twins regarded each other, intently, then Caramon turned his face away.
二人同時に息を吸いこむあいだだけ、双子の兄と弟はじっと見つめあっていた。それからキャラモンが顔を背けた。
Raistlin’s eyes were not on the Dewer, nor on the army marching past him. They were on the gleaming golden figure riding at the army’s head.
レイストリンの目は<デュワー>にも、前を通りすぎてゆく軍隊にも注がれていなかった。その日は、軍隊の先頭に立つ金色に輝く姿に向けられていた。
And it would have taken a sharper eye than the Dewer’s to note that the wizard’s hands gripped the reins with an unnatural tightness or that the black robes shivered, for just a moment, as if with a soft sigh.
そして<デュワー>よりも鋭い目の持ち主であれば、手綱を握る魔法使いの手が不自然なまでにこわばっていることや、ほんの一瞬、まるで小さくため息をついたかのように黒いローブが震えたことが見てとれたことだろう。
***
第七章のカット、マギウスの杖を手に黒馬に乗るレイストリンの顔が、まるで死神のように見えます。死の顎へと送り出したキャラモンを見送る姿。産みの苦しみを、切り離される痛みを感じたのはキャラモンだけではないのです。
蛇足ですが、"ties"という英単語の音に「臍帯」を連想しました。生まれた直後に切り離されるはずだったものを、二人はこの時まで引きずっていたのかもしれません。
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