2016年6月28日火曜日

伝説4巻p191〜《半身》

WAR OF THE TWINS p328
What a cruel joke!
What a cruel and twisted joke!

伝説4巻p191
 なんという残酷な冗談!
 なんという残酷でひねくれた冗談!

Through the hideous torment of his pain, Raistlin could fear the laughter of the gods. To offer salvation with one hand and snatch it away with the other! How they must revel in his defeat!

 恐ろしい苦痛に苛まれながら、レイストリンは神々の笑い声を聞いていた。片方の手で救済手段を与えておきながら、もう一方の手でそれを奪い去ってしまうとは!レイストリンの失敗をどれほど喜んでいることだろう!

Raistlin’s tortured body twisted in spasms and so his soul, writhing in impotent rage, burning with the knowledge that he had failed.

 苦痛に苛まれる体が痙攣によじれるとともに、レイストリンの魂もまた苦痛によじれていた。どうすることもできない怒りに悶え苦しみ、しくじったという意識に焼き焦がされる。

He would not face Paladine’s triumph. To see the god sneering at him, glorying in his downfall--no!

 パラダインの勝ち誇った顔を見たくはなかった。レイストリンをせせら笑い、失墜を喜ぶ顔――否!

***
It is because you cannot bear defeat! Nothing has ever defeated you, not even death itself…. 
 おまえは敗北することが耐えられないからだ!おまえは何ものにも敗北したことがない。死そのものにすら……
確かにこれは耐えられません。傷の痛みよりも何よりも。


But that bastard brother of his, that other half of him, the half he envied and despised, the half he should have been--by rights. To deny him this...this last solace....

 なのにあのいまいましい兄、レイストリンの半身、レイストリンが羨むと同時に見くだしてもいるいる半身、本来なら――当然――レイストリンのものであったはずの半身が、それを許してくれないのだ……この最後のありがたい慰めを……

***

 当然の権利として、本来自分もこうなるはずだった姿。めったにないだけに、レイストリンが容姿や肉体に関するコンプレックスを語る姿にはいたたまれなさを感じます。


“Caramon!” Raistlin cried alone into the darkness. “Caramon, I need you! Caramon, don’t leave me!”

「キャラモン!」レイストリンは一人、闇のなかで叫んだ。「兄さんが必要なんだ! キャラモン、ぼくを置いていかないで!」

He sobbed, clutching his stomach, curling up in a tight ball. “Don’t leave me...to face...alone!”

 レイストリンはすすり泣いていた。腹をつかみ、かたい鞠のように体を丸めて。「ぼくを置いていかないで……一人にしないで……こんな孤独のなかで!」

And then his mind lost the thread of its consciousness.

 そして、かろうじて残っていた意識がとぎれた。

2 件のコメント:

  1. リクエストに答えて下さってありがとうございます。
    キャラモンにコンプレックスを感じつつも、絶対自分の言うことを聞いてくれると甘えてもいたレイストリンが人間臭くてたまりません。
    翻訳版では兄の前で時々口調が幼くなりますが、このシーンでは特に顕著に表れていると思います。
    「ぼくを置いていかないで……一人にしないで……」は日本語版の方が、彼の精神的な弱さや兄への甘えが見えるようです。

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  2. 日本語の話し言葉のバリエーションの豊かさに感じ入るほどに、こちらの作品を英語や他の言語に翻訳するときの苦労はいかほどだろうと思います。私のレイストリンのイメージのかなりの部分は「ぼく」という一人称に依っています。そして富士見版のイラストとのギャップが…

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