“And what is it you will do, if he succeeds in entering the portal?” Kitiara’s hands rested lightly on Dalamar’s chest, where her half-brother had left his terrible mark.
伝説4巻p46
「で、もしレイストリンがうまく<扉>にはいりおおせたら、おまえは何をするつもりなのだ?」キティアラの両手がダラマールの胸に軽くふれた。異父弟のつけた恐ろしい印のあるところに。
Her eyes, looking into the elf’s, were luminous with passion that almost, but not quite, hid her calculating mind.
エルフの目をのぞきこむキティアラの目は熱っぽく輝き、計算高い本心はほとんど――だが完璧ではない――隠されていた。
“I am to block the Portal so that he cannot come through.” His hand traced her crooked, curving lips.
「あの方が通れぬように<扉>を封鎖します」エルフの手がキティアラのにんまりと歪んだ唇をなぞる。
“I could help you,” Kitiara said with a sigh, moving her fingers over Dalamar’s chest and up over his shoulders, kneading her hands into his flesh like a cat’s paws. Almost convulsively, Dalamar’s hands tightened around her, drawing her nearer still.
「わたしが手伝ってやろう」ため息まじりに言い、キティアラは指先をダラマールの胸から両肩へと這わせていった。そして両手で猫の前足のようにエルフの筋肉を軽くなでる。とっさにダラマールの両手が彼女にまわされ、さらに間近に引き寄せた。
“I could help,” Kitiara repeated in a fierce whisper. “You cannot fight him alone.”
「わたしが手伝ってやろう」熱いささやきがくりかえされた。「おまえ一人で闘うのは無理だ」
“Ah, my dear,”--Dalamar regarded her with a wry, sardonic smile--“who would you help--me or him?”
「それはどうも」――拗ねた表情を浮かべて、ダラマールは彼女を見つめた――「どなたをお手伝いになるのですかな――わたしか、それともあの方か?」
***
“convulsively”「とっさに」ですが、”convulse”は「けいれん」「ひきつけ」そして「身悶え」、”convulsive”で「発作的な」だったりします。
そして繰り返される「わたしが手伝ってやろう」。二度目は”I could help,”と、目的語が消えてます。問わせたい、確認させたいんですねダラマールの口から。とどめの一言を繰り出すために。
“Now that,” said Kitiara slipping her hands beneath the tear in the fabric of the dark elf’s black robes, “would depend entirely upon who’s winning!”
「それは」キティアラの両手が黒エルフの黒いローブの破れ目からなかにもぐりこむ。
「どちらが勝つかにかかっているだろうな!」
Dalamar’s smile broadened, his lips brushed her chin. He whispered into her ear, “Just so we understand each, lord.”
ダラマールの笑みがいっそう広がり、唇がキティアラの頬を軽くかすめる。かれは女卿の耳もとでささやいた。「ではお互いに了解をとりつけましたな、女卿どの」
“There is something I would ask. Something I have long been curious about. What do magic-users wear beneath their robes, dark elf?”
「ひとつ聞きたいことがある。前々から知りたいと思っていたことだが、魔法使いというものはローブの下に何を身につけているのかな。黒エルフよ?」
“Very little,” Dalamar murmured. “And what do warrior woman wear beneath their armor?”
“Nothing.”
「ほとんど何も」ダラマールはささやいた。「では、女戦士は鎧の下に何を身につけておられるのですかな?」
「まったく何も」
***
「素肌にじかに鎧なんて着るわけないでしょう、それも女戦士が!」とぷりぷり怒りながら文句つけていた初読時の自分のお子ちゃまぶりを思い出して苦笑しております。この会話の後に「じゃあ、本当にそのとおりか確かめてみる?」と続くのが読めなかったのです。大人にはなってみるものだ、うん。
She would betray him, he had no doubt that. And she knew he would destroy her in a second, if necessary, to succeed in his purpose. Neither found the knowledge bitter. Indeed, it added an odd spice to their lovemaking.
キティアラは裏切るだろう。それは確信できた。そして彼女の方も、ダラマールが目的を達成した暁には、必要とあらば一瞬で自分を滅ぼすだろうとわかっている。どちらもそれを知りながらひどいとは思っていない。それどころか情を交わす営みに奇妙な興趣が加わったくらいだ。
Dalamar!
The voice again, this time unmistakable.
“Shalafi, I hear you,”
(ダラマール!)
ふたたび声がした。今度はまちがいない。
「シャラーフィさま、聞いております」
I have an assignment for you.
Act at once. No time must be lost. Every second is precious....
(おまえにひとつ任務を与えよう)
(すぐに行うのだぞ。むだにできる時間はいっさいないのだから。一秒一秒がこの上なく貴重なのだ……)
Outside the gates of Old City, bonfires burned, young people exchanged flowers in the light and kisses in the dark. The air was sweet with rejoicing and love and the smell of spring blooming roses.
<旧市街>の門の外にはいくつもの篝火が焚かれ、若者たちが明るいところでは花を捧げあい、暗がりでは口づけを交わしている。歓喜と愛と春咲きの薔薇の香りが空気を甘く彩っていた。
But then Raistlin began speaking and Dalamar headed none of these. He forgot Kitiara. He forgot love. He forgot springtime. Listening, questioning, understanding, his entire body tingled with the voice of his Shalafi.
だが、レイストリンがしゃべりはじめると、ダラマールの意識からはすべてが消え去った。キティアラのことも、情愛も、今が春だということも。かれは全身を緊張させてシャラーフィさまの声に耳を傾け、質問をはさみ、言われたことを理解しようとした。
***
クリサニアの件で怒った双子の兄に浴びせられた罵声の数々、そっくりそのまま弟子に投げつけてやっていいですよシャラーフィさま。え、それどころではない?失礼しました。実は、この展開もすっかり予想済みだったとしたら怖いなあ。姉上が弟子に関心を抱いているのに気がついていたばかりか、「ぼくの姉を与えてやってもいい」とまでのたまってましたからね。誰かどうにかしてください。
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