TEST OF THE TWINS p298
“No! Raistlin!” Caramon’s face twisted in anguish. He took a step toward the Portal.
“Stop!” Dalamar screamed in fury. “Stop him, Half-Elven! Kill him if you must! Close the Portal!”
伝説6巻p183
「だめだ! レイストリン!」キャラモンの顔が苦悶に歪む。大男は<扉>のほうに一歩踏みだした。
「止めてください!」ダラマールが大声で叫んだ。「キャラモンを止めてください、ハーフ・エルフどの! 無理ならば殺してください! <扉>を閉じるのです!」
“Caramon!” Tanis cried, springing forward. But, what could he do? He was not strong enough to physically overpower the big man. He’ll go to him, Tanis thought in agony. He will not let his brother die....
「キャラモン!」タニスはどなりながら、前に飛びだした。だが、おれに何ができるだろう? 大男を打ち負かせるだけの力はない。キャラモンはレイストリンのもとに行こうとしている。苦悶の中で、タニスは思った。キャラモンは弟を死なせるようなことはしない……
No, spoke a voice inside the half-elf. He will not...and therein lies the salvation of the world.
いや、とハーフ・エルフの内部で声がした。キャラモンは弟を――そこにこそ、すべての救済がかかっている。
Caramon stopped, held fast by the power of that blood-stained hand.
キャラモンは動かなかった。その血にまみれた手の魔力にがっちりと押さえられているように。
Slowly, struggling against the evil force, Caramon raised the Staff of Magius.
その邪悪な力に抗いながら、ゆっくりとキャラモンは<マギウスの杖>を掲げた。
The dragon’s heads of the oval doorway split the air with their trumpeting, hailing the entry of their Queen into the world.
楕円形の戸口をつくる、五つの竜の首があげる歓呼の叫びが宙を切り裂いた。この世界への<女王>の到来を歓迎する叫びだ。
Then, a shadowy form appeared, standing beside Caramon. Dressed in black robes, white hair flowing down upon his shoulders, Raistlin raised a golden-skinned hand and, reaching out, gripped the Staff of Magius, his hand resting near his twin’s.
そのとき、黒々とした人影があらわれ、キャラモンのすぐ横に立った。黒いローブをまとい、肩に白髪を垂らしたレイストリンが金色の肌をした手をのばして、双子の兄の手のすぐ上で<マギウスの杖>を握った。
The staff flared with a pure, silver light.
The multicolored light within the Portal whirled and spun and fought to survive, but the silver light shone with the steadfast brilliance of the evening star, glittering in a twilight sky.
The Portal closed.
杖から、まじりけのない銀色の光が放たれた。
<扉>の中で万色の光が渦巻き、ぐるぐる回転して生きのびようと抗った。だが銀色の光は、夕暮れの空に輝く宵の明星のごとく、揺らぎない光輝を放って輝いていた。
<扉>が閉じた。
The metallic dragon’s heads ceased their screaming so suddenly that the new silence rang in their ears. Within the Portal, there was nothing, neither movement nor stillness, neither darkness nor light.
金属の竜の頭が叫ぶのをやめた。それはあまりに唐突だったので、耳の中で新たな沈黙が鳴り響くように感じられた。<扉>の内側には何もない。動いてもいなければ、静止しているわけでもない。闇もなければ光もなかった。
Caramon stood before the Portal alone, the Staff of Magius in his hand. The light of the crystal continued to burn brightly for a moment.
Then glimmered.
Then died.
キャラモンはただ一人、<扉>の前に立っていた。<マギウスの杖>を握って。水晶の光がしばらくのあいだ、まばゆく燃えるような輝きを放ちつづけていた。
それから、ちらちらとまたたく。
そして、消えた。
The room was filled with darkness, a sweet darkness, a darkness restful to the eyes after the blinding light.
室内は闇に満たされた。穏やかな闇だ。目がつぶれそうな光のあとで、それは目に安らぎを与えてくれる闇だった。
And there came through the darkness a whispering voice.
“Farewell, my brother.”
闇の中で、ささやき声がした。
「さらばだ、弟よ」
“Farewell, my brother.”は、富士見版ではキャラモンの台詞なんですね。
返信削除《「もう兄さんなんか必要ないんだ!」》の切ない安らぎに加え、静かな余韻がいつまでも心に残ります。
"my brother,"はもしかして富士見版以外では違った訳になっているのでしょうか?
返信削除ここで「さようなら、兄さん」だったりしたらかなり印象が変わりますね…
初めまして。ドラゴンランスは好きで、大人になった今でも年に一度は読み直しています。私も富士見版の訳しかしらないので、実はレイストリンが兄へ向けた訳というのをネットでみてびっくりした記憶があります。私はレイストリンありきのキャラモンが1人の人間として生まれ変わる瞬間を表した、切ないけど、美しいセリフということで、キャラモンからレイストリンへの言葉として捉えています。でも、どちらのセリフでも、とても良い場面になりますよね!
返信削除フィズバンだって!〜様
返信削除初めまして、お返事が遅くなり申し訳ありません。
"Farewell, my brother."という台詞は戦記から何度も繰り返されてきていて、そのほとんどがレイストリンの「さようなら、兄さん」でした。
ちなみに戦記5巻の鮮血海の「さようなら、兄さん……」は原文では"My brother..."で、これはキャラモンの言葉とも取りうるな、とその時思いました。
http://wordsofd.blogspot.jp/2015/01/5p89.html
今回の台詞も、どちらとも解釈できるように書いてあるのではないかと思っています。