2016年8月7日日曜日

伝説6巻p63〜《飛翔》

8月2日、伝説6巻p20〜《part》に少々加筆があります。

TEST OF THE TWINS p225
Tas could see, from his lofty vantage point, the bodies of knights and their horses scattered about the streets like tin soldiers smashed by a vengeful child.

伝説6巻p63
 空の高みという有利な位置にいるタッスルには、街路じゅうに騎士たちとその馬の死骸が、執念深い子どもにたたきつぶされた鉛の兵隊みたいにころがっているのが見てとれた。

Tas swallowed painfully. “Oh, dear,” he whispered, “suppose this is my fault! I didn't really know, after all.”

 タッスルは痛ましい思いでつばをのみくだした。「ああ、ひどいや」つぶやく。「きっとこれはぼくのせいだ! うーん、本当のことはよくわからないけど」

“I just supposed--No,” Tas answered himself firmly.

「もしかしたら、ぼくは――ううん」タッスルはきっぱりと自答した。

“I did what I had to do and, since it’s such a muddle, I won’t think about it, ever again.”

「ぼくはやらなきゃならないことをやったんだ。これはひどくごちゃごちゃしてるから、もうこのことは考えないぞ。二度と」

“Kitiara’s dragon!” Tas murmured, recognizing the splendid, deadly Skie. But the dragon had no rider, Kitiara was nowhere to be seen.

「キティアラのドラゴンだ!」凶悪にして壮麗な竜スカイアだと知って、タッスルはつぶやいた。だが竜には誰も乗っておらず、キティアラの姿はどこにも見あたらない。

The citadel was even more wonderful up close than from down below. he could see quite clearly, the huge, jagged chunks of rock hanging beneath it--what had once been the bedrock on which it was built.

 間近で見る城塞は、下から見るよりはるかにすばらしい。下側にぎざぎざとがった岩の固まりがいくつもぶらさがっているのがはっきりと見てとれる――かつてはそこを基盤として城塞が建っていたのだ。

“I don’t think the main entrance would be advisable,” said the dragon, swerving suddenly in his flight. Banking sharply he circled around the citadel. “I will take you to the back.”

「正面入り口はお勧めできませんね」ドラゴンは飛びながら、唐突に向きを変えた。大きく傾きながら、城塞のまわりを旋回する。「裏にお連れしますよ」

Tas would have said “thank you,” again but his stomach had, for some unaccountable reason, suddenly taken a plunge for the ground while his heart leaped into his throat as the dragon’s circling motion turned them both sideways in the air.

 タッスルはもう一度、「ありがとう」と言おうとしたが、どういうわけか胃のあたりが急に地面のほうに押しつけられ、心臓が喉もとまで跳びあがった。ドラゴンが弧を描いて飛んだため、タッスルも竜ともども空中で横ざまになったのだ。

then Khirsah leveled out and, swooping downward, landed smoothly in a deserted courtyard.

 それからキルサーは水平にもどり、下降して、人けのない中庭になめらかに着地した。

“Thank you! Good luck!”

「ありがとう! 幸運を祈るよ!」

But if the bronze heard him, he did not answer. Khirsah was climbing rapidly, gaining air space. Zooming up after him came Skie, his red eyes glowing with hatred.

 だが青銅竜は、もし聞こえていたとしても、返事はしなかった。キルサーは即座に舞いあがり、空中で有利な位置を占めようとした。キルサーのすぐうしろにスカイアが、憎悪に燃える赤い目をして、大きく迫っていたのだ。

***

「戦記」でも取り上げましたが、ドラゴンの飛翔や空中戦の描写のかっこよさ、惚れ惚れします。しかし、手負いの身で大青竜スカイアと相対したキルサーの運命……その後のかれの消息は知れません。ソス卿の魔法で手も足も出ずに即死するよりはずっと良かったろうとは思いますが。
(何か未訳のサイドストーリーに登場していたりしないでしょうか?)


As a precaution, he drew his little knife, but he met no one. The corridor was empty and so were the narrow, steep stairs.

 用心のために小さなナイフを引き抜いたが、誰にも出くわさない。廊下はがらんとして、狭く急な階段にも人けはなかった。

“Humpf,” Tas muttered, “certainly a much safer place to be than the city, right now. i must remember to mention that to Tanis.”

「ふん」タッスルはぶつぶつ言った。「いまのところ、絶対にこっちのほうが街よりずっと安全な場所だぞ。忘れずにこのことをタニスに言わなきゃ」

I can either go back down and try another way, he reasoned, or I can keep going.

 もどってほかの道をためしてみてもいいし、このまま進んでもいい。

***

 なんの変哲もない文章ですが、なんだか往年のゲームブックのパラグラフの匂いがします。
「きみは登り階段の途中にいる。もどってほかの道をためすなら××へ、このまま登り続けるなら◯◯へ――」
「火吹山の魔法使い」、そして思い出したらすごくむかついてきた「盗賊都市」(三つのアイテムを集めてこいって言われて、いざ集めてみたらあれだったあれですよ!)もコンピューターゲーム化されるそうですね。


The sounds of fighting were much clearer, reverberating loudly against the stone. Hurrying across the wooden floor of the balcony, Tas leaned over the edge of the railing, peering down below at source of the sounds of wood smashing and swords clanking and cries and thuds.

 戦いの音は石に反響して、いっそう大きく明瞭に聞こえた。タッスルはバルコニーの木の床を急いで横切り、手すりの上から身を乗りだして下をのぞいた。そちらから、木の割れる音や剣のがちゃがちゃいう音、叫び声やどすんという音が聞こえていたからだ。

“Hullo, Tanis. Hullo, Caramon!” he called in excitement. “Hey, have you figured out how to fly this thing yet?”

「おおい、タニス。おおい、キャラモン!」
「ねえ、こいつを飛ばす方法はもうわかった?」

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