“’”Lord of Palanthas,” the death knight called in a hollow voice that came from the realms of death,’”
伝説6巻p20
「『パランサスの君主よ』死の騎士は、冥府から響いてくるうつろな声で呼ばわった」
“’Lord Amothus took his place upon the wall, looking down at the death knight.’”
「アモサス卿は城壁の上に陣どっており、死の騎士を見おろしていた」
“’”Then buy it at the price of your lives!”’”
「『さすれば、生命を犠牲にして贖うがよい!』」
“Shush!” Caramon hissed and went on, “’--help him no longer. The bronze dragon he rode, having no magical protection, died at Soth’s command, forcing Tanis Half-Elven to fight the death knight on foot.’”
「静かに!」キャラモンはしっと制して、先を続けた。「“――助けることはできなかった。乗っていた青銅竜は魔法の防御をもっていなかったためにソス卿の呪文で死に、ハーフ・エルフのタニスは徒歩で死の騎士と戦わねばならなくなった」
“’Lord Soth dismounted to meet his opponent according to the Laws of Combat as set forth by the Knights of Solamnia, these laws binding the death knight still, even though he had long since passed beyond their jurisdiction.’”
「ソス卿はソラムニア騎士が定める<戦闘の法>にしたがい、馬から降りて敵に相対した。死の騎士は騎士団の管轄からはずれて長い年月がたつというのになお、こうした法に縛られていた」
“’Tanis Half-Elven fought bravely but was not match for Lord Soth. He fell, mortally wounded, the death knight’s sword in his chest--“
「ハーフ・エルフのタニスは敢然と立ち向かったが、しょせんソス卿の敵ではなかった。かれは致命傷を負って倒れ、その胸に死の騎士の剣が――」
“No!” Tas gasped. “No! We can’t let Tanis die!” Reaching up, he tugged on Caramon’s arm. “Let’s go! There’s still time! We can find him and warn him--“
「いやだ!」タッスルはあえいだ。「いやだ! タニスを死なせるわけにはいかないよ!」手をのばし、ケンダーはキャラモンの腕をひっぱった。「行こう! まだ時間はある! タニスを見つけて注意を――」
“I can’t, Tas,” Caramon said quietly. “I’ve got to go to the Tower. I can sense Raistlin’s presence drawing closer to me. I don’t have time, Tas.”
「だめだ、タッスル」キャラモンは静かに言った。「おれは<塔>に行かなきゃならん。レイストリンの存在がおれを引き寄せようとしているのを感じるんだ。おれには時間がないんだ、タッスル」
“You can’t mean that! We can’t just let Tanis die!” Tas whispered, staring at Caramon, wide-eyed.
「本気で言ってるんじゃないよね! タニスを死なせるなんてできないよ!」タッスルは小声で言い、大きく目を見開いてキャラモンを見つめた。
“No, Tas, we can’t,” said Caramon, regarding the kender gravely. “You’re going to save him.”
「いや、タッスル。だめだ」キャラモンは重々しい顔でケンダーを見つめた。「おまえがタニスを助けに行け」
***
「静かに!」からのこのシーン、原書”TEST OF THE TWINS”の冒頭で引用されています。戦記Ⅱではタルシスの赤竜亭での今生の訣れ。戦記Ⅲでは沈みゆく船から一人転移するレイストリンの告白。伝説Ⅰでは「黒き者」を殺そうと寝室に忍び入り、その顔を見てしまうキャラモン。伝説Ⅱでは自分自身を処刑するレイストリンの悪夢でした。
“Tasslehoff Burrfoot,” Caramon said sternly. “I suppose it is possible that the gods arranged this entire matter simply for your own private amusement.”
「タッスルホッフ・バーフット」キャラモンがいかめしく言う。「ひょっとしたら、これまでのことはすべて、神々がおまえ一人をおもしろがらせるために企てたんじゃないかと思うときがあるぞ」
“Possible--but I doubt it. We’re part of this world, and we’ve got to take some responsibility for it.”
「ひょっとしたらだが――しかし、まあ、そんなことはないだろう。いいか、おれたちはこの世界の一部なんだ。だから、これまでのことにはなんらかの責任を負わなければならない」
“But--it’s just I’m such a short part of the world--if you take my meaning.”
「でも――ぼくはこの世界のこんなにもちっぽけな一部にすぎないんだ――ぼくの言ってる意味わかるよね」
***
前回の老兵さんへの”you”もそうですが、このくだりもなんだかメタというか、まるで作者ワイス&ヒックマンが読者に向かって語りかけてきているような気がします。ここまで来たら、読者もまたこの世界の一部なのです。
“Tas, you’ve got to do this!” Caramon yelled, his angry voice echoing down the empty street. “Are you going to let Tanis die without trying to help him?”
「タッスル、おまえはやらねばならんのだ!」キャラモンはどなった。怒りの声ががらんとした通りに響きわたった。「助けないでタニスを見殺しにする気か?」
8/7追記
Tas shrank back. He’d never seen Caramon angry before., at least, not angry at him. And in all their adventure together, Caramon had never once yelled at him.
タッスルはたじたじとあとずさった。これまで、キャラモンが怒ったところを見たことはなかった――少なくとも、タッスルに怒ったところは。ずっといっしょに冒険の旅をしてきたが、これまでキャラモンは一度も、タッスルをどなりつけたことはなかった。
“No, Caramon,” he said meekly.
「やめてよ、キャラモン」ケンダーはいくじのない声を出した。
***
ここ、どうしてタッスルはこれほど衝撃を受けているんだろう?とちょっと疑問でした。そこにこんな情報が(リツイート:シェル() @WitShell さん)。ありがとうございます。
https://twitter.com/BB45_Colorado/status/495157179934982144
この発言が指している「怒鳴る」が”yell”かどうかはわかりませんが、どなられたときのタッスルは、まるでキャラモンが自分に手をあげたかのように感じたんだろうな、と想像します。
“Caramon got rid of me!”
“Now, what do I do?”
“But if I go to Caramon, Tanis will die!”
“Both of them need me!”
「キャラモンはぼくを追いはらったんだ!」
「ああ、どうすればいいんだろう?」
「ぼくがキャラモンのところに行ったら、タニスが死んじゃう!」
「どっちにもぼくが必要なんだ!」
Then--“I know!” His brow cleared. “That’s it!”
と――タッスルの愁眉が開けた。「わかったぞ!」
“I’ll rescue Tanis,”
“and then I’ll come back and rescue Caramon. Tanis might even be of some help to me.”
「まずタニスを助けるんだ」
「それから、もどってきてキャラモンを助けるんだ。タニスも手を貸してくれるかもしれない」
Scuttling down the alley, sending cats scattering in a panic, Tas frowned irritably. “I wonder how many heroes this makes that I’ve had to save,” he said to himself with a sniff. “Frankly, I’m getting just a bit up with all of them!”
仰天した猫どもを蹴ちらし、路地を全速力で駆け抜けながら、タッスルはもどかしそうに眉をひそめた。「ぼくが救わなくちゃならない英雄は、いったい何人いるんだろう」鼻をすすりながらひとりごとを言う。「ほんとの話、あいつらにはちょっとうんざりしてくるよ!」
***
この世界でもっとも多くの人をうんざりさせたであろう英雄、かくのたまいき。
(もひとつ追記)ああーやっちゃった!今回最初につけたエントリタイトル《英雄》、伝説3巻p238〜で既に使ってるじゃないですか……というわけで《part》に変更しました。ううう。『戦記』や他の時代とかぶるのはありなんですけどね、マイルールとしては。
そうそう、『セカンドジェネレーション』と『夏の炎の竜』(もしかしたら『英雄伝』も一部入るかも?)はまたところを移し、"Echoes〜"を名乗ります。『魂の戦争』が何になるかは……おわかりですよね?
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