“I’m glad you’re here with me, Tanis,” Caramon said.
伝説6巻p129
「あんたがいてくれて助かった、タニス」キャラモンが言った。
***
<塔>に至るまでの道のりや、今後のダラマールへの助けばかりでなく、キティアラ様を看取ってくれたことも入っているのだと思います。思えばキャラモンと異父姉との再会は、あの鮮血海、ペレチョン号の甲板での一瞬だけだったんですね。今際の彼女が、キャラモンの存在に気づいたとは思えませんし。
How can he be so calm? Tanis wondered. And a voice within him replied, it is the calm of one who knows and accepts his fate.
どうしてそんなに冷静でいられるのだ? タニスはいぶかった。内なる声がそれに答えた。これはおのれの運命をさとり、それを甘受したものの冷静さなのだ、と。
The dark elf closed his eyes, biting his lip to keep from crying out. He had refused a potion to ease the pain. “If you fail,” he had said to Caramon, “I am our last hope."
黒エルフは目を閉じ、唇を噛んで悲鳴をあげまいとした。痛みを和らげる薬を使うことは拒んでいたのだ。「もしあなたが失敗したら、わたしが最後の頼みの綱になるでしょう」
Our last hope, thought Tanis--a dark elf. This is insane! It can’t be happening.
最後の頼みの綱か、タニスは思った――黒エルフが。とんでもない話だ! こんなことはありえない。
Memories flitted about him like the guardians of the Tower, reaching out to touch him with their cold hands.
さまざまな記憶が<塔>の番人どものようにふわふわとタニスのまわりを漂い、かれにふれようと冷たい手をのばしてきた。
Caramon sneaking food off Flint’s plate while the dwarf had his back turned.
フリントが背を向けた隙にキャラモンがドワーフの皿から料理をくすねている。
Raistlin conjuring up visions of wonder and delight for the children of Flotsom.
フロットサムの子どもたちのためにレイストリンがおもしろおかしい幻想を呼び出して見せてやっている。
Kitiara, laughing, throwing her arms around his neck, whispering into his ear.
キティアラが笑いながらタニスの首に両腕を投げかけ、耳もとにささやきかける。
Tanis’s heart shrank within him, the pain brought tears to his eyes. No! it was all wrong! Surely it wasn’t supposed to end this way!
タニスは心がしめつけられ、痛ましい思いに目に涙があふれた。ちがう! 何もかもまちがっている! 絶対にこんな結末を迎えていいはずがない!
Human, half-elf, and dark elf watched the Portal in silence.
人間、ハーフ・エルフ、そして黒エルフは、無言で<扉>を見守っていた。
The silence blanketed them, as thick and stifling as the darkness in the corridor, as the evil within the room. The dripping of the water clock grew louder, magnified, every drop seeming to jar Tanis’s bones.
三人の上に沈黙が垂れこめた。廊下の闇のように、室内の邪悪のように重く息苦しい沈黙が。水時計のしたたりの音が刻一刻と大きく強くなり、その一滴一滴がタニスの身体をゆさぶるかに思えた。
Both spoke at once. “Caramon...”
“Tanis...”
Desperately, Caramon grasped hold of Tanis’s arm. “You’ll take care of Tika for me, won’t you?”
双方が同時に口を開く。「キャラモン……」
「タニス……」
死にものぐるいの力で、キャラモンはタニスの腕をつかんだ。「おれにかわってティカのめんどうをみてやってくれるな?」
“If I fail, Dalamar will need your help. Tell Tika good-bye, and try to explain to her, Tanis. Tell her I love her very much, so much I--“
「もしおれが失敗したら、ダラマールにはあんたの助けが必要だ。ティカによろしく伝えて、事情を説明してやってくれ、タニス。とても愛していると伝えてくれ。本当に心から愛して――」
“I know what to tell her, Caramon,” he said, remembering a letter of good-bye of his own.
「ティカにどう言えばいいかはわかるよ、キャラモン」自分が書いた別れの手紙を思い出し、タニスは言った。
The dragons shrieked in warning, triumph, hatred.... Tanis didn’t know.
竜の首が口々に金切り声をあげた。警告、勝利、憎悪……いったいどれなのか、タニスにはわからなかった。
There was a blinding, swirling, crashing wave of many-colored light.
And then it was dark.
Caramon was gone.
万色の光が目のつぶれるような輝きを放ち、激しく渦巻く波となった。
それから、暗くなった。
キャラモンの姿は消えていた。
“May Paladine be with you,” Tanis whispered, only to hear, to his discomfiture, Dalamar’s cool voice, echo, “Takhisis, my Queen, go with you.”
「パラダインとともにありますように」タニスはつぶやいた。と、面食らったことに、ダラマールの冷ややかな声がそれに重なるのが聞こえた。
「わが女王タキシスとともにありますように」
***
些細な突っ込みどころを発見してしまいました。レイストリンが幻術ショーを演じていたのはバリフォールの「豚と口笛」亭でのことで、フロットサムの「桟橋」亭では息を潜めていたはずですね。もし仮にフロットサムでも公演していたとして、その間ほとんど「潮騒」亭から出なかったタニスちゃんは見ていない筈ですし。
おそらくタニスちゃんの記憶が混乱しているのでしょう。かれにとってもフロットサムでの日々は夢だったのです、きっと。
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