“It strikes quickly, without warning. Yesterday, the children were playing in the yard. Last night, they were dying in their mother’s arms.”
伝説3巻p329
「病がいきなり襲ってきたのです、何の前触れもなしに。つい昨日は、子どもたちが庭で遊んでいました。そして昨夜、母親の腕のなかで死んでいったのです」
“Prayers!” The young man laughed bitterly. “I am their cleric!”
“You see what good prayer have done!”
「祈るですって!」若者は苦い笑いをあげた。「わたしはこの村の僧侶だったのですよ!」
「お祈りがどんなにきいたかご覧になったでしょう!」
“What?”
“I am going to heal you,”
“I am a cleric of Paladine.”
「何ですって?」
「あなたを癒すのですよ」
「わたしはパラダインの僧侶なのです」
“No!” the young man cried, his hand wrapping around hers so tightly it hurt.
「まさか!」若者は叫んだ。手が、クリサニアの手を痛いほどきつく握りしめる。
“I am a cleric, too, a cleric of the Seeker gods. I tried to heal my people”--his voice cracked--“but there...there was nothing I could do. They died!” His eyes closed in agony. “I prayed! The gods...didn’t answer.”
「わたしも僧侶なのです――シーク教の神々の。わたしも村の人々を癒そうとした」――声がしわがれた――「だが……できることは何ひとつなかった。みな死んでしまった!」苦悩にかられて、若者は目を閉じた。「わたしは祈ったのに! 神々は……答えてはくださらなかった」
“You know of Paladine, of the ancient gods?”
「パラダインのことは知っているでしょう?いにしえの神々の一人です」
“Yes,” he said bitterly. “I know of them. I know they smashed the land. I know they brought storms and pestilence upon us. I know evil things have been unleashed in this land.”
「ええ」苦々しく言う。「知っていますとも。その神々がこの世界を滅ぼしたってことはね。その神々は嵐と疫病をわれわれにもたらしたのです。悪しきものどもがこの地に解き放たれたことも知っていますよ」
”And then they left. In our hour of need, they abandoned us!"
「そのあげくに、その神々は去ってしまったのです。われわれが必要としているときに、神々はわれわれを見捨ててしまったのです!」
She had expected denial, disbelief, or even total ignorance of the gods. She knew she could handle that. But this bitter anger? this was not the confrontation she had been prepared to face.
神々への否定や不信、完全な無視などは予期していた。そういうものなら、なんとかできるという自信があった。だが、この辛辣な怒りはどうだろう? こんなものに向かいあうことになるとは思ってもみなかった。
“The gods did not abandon us,” she said, her voice quivered in her earnestness.
The story of Goldmoon healing the dying Elistan and thereby converting him to the ancient faith came vividly to Crysania filling her with exultation.
「神々はわたしたちを見捨てたわけではないのです」クリサニアの声は真剣さのあまり、顫えていた。
ゴールドムーンが死にかけていたエリスタンを癒し、いにしえの神々への信仰に立ち戻らせたという話がまざまざとよみがえり、クリサニアは歓びでいっぱいになった。
“I am going to help you,”
“Then there will be time to talk, time for you to understand.”
「あなたを助けてあげましょう。話はそれからです。たっぷり時間をかけて理解させてあげますわ」
“No,” he said steadily, ”you must understand. you don’t need to convince me. I believe you!” He looked up into the shadows above him with a grim and bitter smile.
「いいえ」きっぱりと言う。「あなたのほうこそ、理解しなければなりません。わたしを説得する必要はありません。わたしはあなたの言うことを信じているのですから!」若き僧侶は苦い、辛辣な笑みを浮かべて、頭上によどむ暗がりを見あげた。
“Yes, Paladine is with you. I can sense his great presence. Perhaps my eyes have been opened the nearer I approach death.”
「そう、パラダインはあなたとともにおられます。その偉大な存在はわたしにも感じられます。きっと、死に近づくにつれてものがちゃんと見えるようになってきたのでしょう」
“Wait!”
“Listen! Because I believe I refuse...to let you heal me.”
「待ってください!」
「聞いてください! 信じているからこそ、わたしは……あなたに癒していただくことを拒みます」
“Because,” he said softly, each breath coming from him with obvious pain, “if Paladine is here--and I believe he is, now--then why is he...letting this happen! Why did he let my people die? Why does he permit this suffering? Why he cause it?”
「それは」僧侶は静かに言った。ひどく苦しそうに、ひと息ひと息押しだしている。「もしパラダインがここにおられるのなら――今は、いることがわかります――なぜ……このようなことをお起こしになったのです! なぜこの民人を死なせるようなことをなさったのです? なぜこのような苦しみをお与えになるんです? どうしてこのようなことを?」
“Answer me!” He clutched at her finger angrily. “Answer me!”
「答えてください!」僧侶は怒りをこめてクリサニアをつかんでいた。「答えてください!」
Her own questions! Raistlin’s questions! Crysania felt her mind stumbling in confused darkness. how could she answer him, when she was searching for these answers herself?
それこそわたし自身が抱いていた問いだ! そしてレイストリンが抱いていた問いなのだ!
クリサニアは自分の心が混沌とした闇のなかで揺らぐのを感じた。どうして答えることができるだろう――
Suddenly, Crysania realized bleakly that time could not be altered, at least not this way, not by her.
不意に、クリサニアはそら寒い思いでさとった。時を変えることはできない――少なくとも、このようなやりかたでは。クリサニアの手では。
“I’m sorry,” he said gently, his fever-parched lips twitching. “Sorry...to disappoint you.”
「すみません」熱のためにひび割れた唇を動かし、若者はやさしく言った。「すみません……あなたをがっかりさせてしまって」
“I understand,”
“and I will respect your wishes.”
「わかりました」
「あなたの願いを尊重しましょう」
“Thank you,”
「ありがとう」
“Do one thing for me,”
「わたしのために、ひとつしていただけますか」
“Anything,”
「なんでもいたしますわ」
“Stay with me tonight...while I die....”
「今夜はそばについててください……わたしが死ぬまで……」
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