Argat ran his fingers through his black beard. Drawing out his knife, he flipped it into the air and caught it deftly. Glancing at the mage, he stopped suddenly, spreading his hands wide.
伝説4巻p105
アルガトは長い顎鬚を指でしごいた。ナイフを抜き、宙に投げあげて器用に受けとめる。ちらりと魔法使いに目を向けて、かれはすぐにそれをやめ、両手を広げて見せた。
“I sorry. A nervous habit,” he said, grinning wickedly. “I hope I not alarm you. If it make you uneasy, I can--“
「すまない。悪い癖でな」歪んだ笑みを浮かべる。「警告の必要はないかと思ってな。もしこれが怖いっていうんなら、やめても――」
“If it makes me uneasy, I can deal with it,”
“Go ahead.”
「もしそれが怖いっていうんなら、やめさせることができるさ」
「さあ。続けるがいい」
A slender, white hand snaked out of the darkness, snatched the knife by the hilt, and deftly plunged the sharp blade into the table between them.
ほっそりした白い手が蛇のように闇のなかからのび、ナイフの柄をつかんで鋭い刃を二人のあいだの卓に器用に突き刺した。
“Magic,”
“Skill,” said Raistlin coldly. “Now, are we going to continue this discussion or play games that I excelled at in my childhood?”
「魔法か」
「手技だよ」レイストリンは冷ややかに言った。「さて、話を続けるかね? それともこちらが子供のころに得意だった遊びをいくつかやってみるか?」
“What does your kind consider ‘impressive’?” Raistlin asked his lip curling. “A few dozen hacked-up bodies--“
“The head of your general.”
「おまえたちの種族が『印象的』と考えるのはどういうものだ?」唇を歪め、レイストリンはたずねた。「めった切りにされた死体が二、三十とか――」
「そっちの将軍の首だよ」
There was a long silence. Not a rustle, not a whisper of cloth betrayed Raistlin’s thoughts. He even seemed to stop breathing. the silence lasted until it seemed to Argat to become a living entity itself, so powerful was it.
長い沈黙が漂った。レイストリンが考えているときにおこるさらさらいう衣ずれの音すらなかった。魔法使いは呼吸すらやめているように見えた。あまりに長く続く沈黙に、アルガトは沈黙そのものが生きているような気がしてきた。それほど強力な沈黙だった。
***
この沈黙の間、かれの内にあったものはなんでしょう。もしかしたら、聞いたときには有頂天のあまり気にも留めなかったことを、この時思い出し、初めてその意味を理解したのかもしれません。
ダラマールが何も知らずに読み上げた、アスティヌスの著書の一節。フィスタンダンティラスがデヌビスと<扉>に向かう前に、かれがイスタルから伴った元剣闘士のフェラーガス将軍が、デュワーに殺害されていたということを。
あるいは。
I killed him once. I can do it again.
ぼくは一度かれを殺している。もう一度だってできるんだ。
“Agreed,” Raistlin’s voice was level, without tone or emotion. But, as he spoke, he leaned over the table. Sensing the archmage gliding closer, Argat pulled back.
「承知した」レイストリンの声は平静で、抑揚もなければ感情もあらわれていなかった。だが、しゃべりながらかれは卓の上に身を乗りだした。大魔法使いが近寄ってくるのを感じて、アルガトは身を引いた。
He could see the glittering eyes now, and their deep, black chilling depths pierced him to the very core of his being.
きらめく目が見える――深く黒々とした、凍りつくような深淵が。<デュワー>を貫き、深奥までのぞきこむ。
“You not called the Dark One without reason, are you, my friend?” he said, attempting a laugh as he rose to his feet, thrusting the scroll in his belt.
「あんた、理由もなく<黒き者>と呼ばれてるわけじゃなかったんだな、ご友人?」<デュワー>は立ちあがりながら笑おうとした。
Raistlin did not answer, indicating he had heard only by a rustle of his hood.
レイストリンは答えなかった。ローブの衣ずれの音で聞こえたことを示しただけだった。
“Do not worry, friend. We not fail you.”
“No, friend,” said Raistlin softly. “You won’t.”
Argat started, not liking the mage’s voice.
「心配はいらんぜ、ご友人。おれたちは失敗しない」
「そうだな、ご友人」静かにレイストリンは言った。「あんたは失敗しない」
アルガトはぎくっとした。魔法使いの声の調子が気にいらなかった。
“You see, Argat, that money has been cursed. If you double-cross me, you and anyone else who has touched that money will see the skin of your hands turn black and begin to rot away.”
「いいか、アルガト。あの金には呪いがかかっている。もしもぼくを裏切ったら、おまえろうがほかの誰だろうがあの金にふれた者は手が真っ黒になり、腐れ落ちることになるぞ」
“And when your hands are a bleeding mass of stinking flesh, the skin of your arms and your legs will blacken. And, slowly, as you watch helplessly, the curse will spread over entire body. When you can no longer stand on your decaying feet, you will drop over dead.”
「両手が臭い匂いのする血まみれの肉のかたまりになったら、次は両腕と両足が黒くなる。そしてじわじわと呪いは全身に広がっていくんだ。おまえがなすすべもなく見まもるうちにな。腐っていく両足の上に立っていられなくなったら、倒れて死ぬんだ」
***
みんなの大長虫キャティルペリウスははったりでしたが、この呪いは効力を発揮したのではないかという気がします。
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