“Good morning, sir. Welcome to Palanthas. Please state your name and business.” This delivered in a bright, official voice by a bright, official young man who must have just come on duty.
伝説5巻p139
「おはようございます、旦那。パランサスへようこそ。お名前とご用件をおっしゃってください」こう告げたのは、どうやら当直についたばかりと見える、ひどく快活な役人ふうの若者だった。
“Lord Tanis!”
“I beg your pardon, sir.”
“Damn it, man,”
“don’t apologize for doing your job. Here’s the letter--”
「タニス卿でしたか!」
「失礼いたしました、閣下」
「もういい」
「職務でしていることを謝罪するには及ばんよ」
***
竜槍の英雄タニス卿。”Sir Tanis”だろうと思っていたら、なんとびっくり”Lord Tanis”ですよ。ソス卿やグンター卿と同じ、城持ちの領主と同格の扱いですか。出世したものです。
また、同じ”sir”でも冒頭は「旦那」、身分関係とは無関係な客人への呼びかけですね。素性を知ってからは「閣下」になってます。
Tanis Half-Elven,
We must meet with you immediately. Gravest emergency. the Temple of Paladine. Afterwatch rising 12, Fourthday, Year 356.
ハーフ・エルフのタニスどのHis gaze went, unwillingly, to the Tower of High Sorcery.
急遽、貴殿に会う必要が生じた。重大この上ない非常事態だ。三五六年、第四日、明の刻・昇十二、パラダインの神殿にて。
われ知らず、視線が<上位魔法の塔>に向かう。
“I’ll wager it has something to do with you, old friend,” he murmured to himself, frowning and thinking, once again, of the strange disappearance of the cleric, Lady Crysania.
「賭けてもいい、きっとあなたに関係することでしょうね、なつかしい友よ」ハーフ・エルフは口のなかでつぶやき、眉間に皺を寄せて、かの僧侶クリサニアの奇妙な失踪のことをまた考えた。
***
<上位魔法の塔>を見て思い浮かべる旧友と言ったら一人しかいないと思うんですが、何故ここでタニスは敬語を使ってるんでしょうね。皮肉、それとも当人のものまね?ささやくような声音に、柔らかな棘を潜ませたレイストリン口調でしゃべるタニス。どこかにあったような気がします、そんな場面。
“Tanis Half-Elven?”
「ハーフ・エルフのタニスどのですね?」
Raistlin! Tanis thought instantly, having had the archmage in his mind only moments before.
レイストリン! 一瞬タニスは、ほんのいましがた頭に浮かべていた大魔法使いかと思った。
Besides, now that Tanis was paying attention, he realized that the voice was firm and deep--not like Raistlin’s soft, unsettling whisper.
それに、注意をはらってみると、声もきっぱりした深い響きを持っていることがわかる――レイストリンの、人の心を乱すようなやわらかいささやき声とはちがう。
“Then you live their? With Rai--With him?“ Try as he might, Tanis knew he could not speak the archmage’s name without bitter anger, and so he avoided it altogether.
「では、きみはあそこに住んでいるのか? レイ――あいつといっしょに?」タニスはその大魔法使いの名前を口にしようとしたが、激しい怒りがこみあげてくるのをおぼえ、やめにした。
“He is my Shalafi,” answered Dalamar in a pain-tightened voice.
“So you are his apprentice,” Tanis responded, recognizing the elven word for Master.
「あの方はわたしのシャラーフィさまです」苦痛にこわばる声で、ダラマールは答えた。
「では、きみはやつの弟子なのか」その言葉がエルフ語で、“師”を意味することをタニスは知っていた。
“Elistan--“ Tanis began warmly.
“That is, R--Revered Son”--Tanis stumbled over the formal title--“you are looking well,”
「エリスタン――」タニスはしたしげな声でしゃべろうとした。
「ああ、その、聖者どの」――タニスはもぐもぐと形式的な称号に言い直した――「お元気そうでなによりです」
***
“Lord Tanis”であっても聖者さまは絶対。この時眉をひそめた僧侶はガラドでしょうね。
“And you, Tanis Half-Elven, have degenerated into a liar,” Elistan remarked, smiling at the pained expression Tanis tried desperately to keep off his face.
「あなたは嘘つきになりましたな、ハーフ・エルフのタニス」タニスが必死で顔に出すまいとつとめている痛ましげな表情を見て、エリスタンはにっこりした。
“Dying lends one special significance. ‘They stand in line to see me, who once would not have glanced my way.’ Isn’t that how the old man’s poem went?”
「死ぬことには、ひとつ重大な意味があります。『かれらは列をなしてわたしを見にくる、以前はわたしの具合などちらりとも見ようとしなかったというのに』あの老人の詩にも、こうあったのではありませんかな?」
“Is your Shalafi behind this? Is he responsible for this woman’s disappearance?”
“Because, by the gods, if he has harmed her, I’ll twist his golden neck--“
「この裏にはきみのシャラーフィさまがいるんだな? クリサニアの失踪はやつのせいなんだな?」
「神々にかけて、もしやつがクリサニアに危害を加えていたら、おれはやつの首をねじ切ってやる――」
***
いまだに自分が見えてない、成長してない人が、ここにももう一人。あなた、それほどクリサニアのことが好きではないと自分で認めてるじゃないですか。その身に何かがあったとして、脆弱な魔法使いの首を素手でねじ切るほどの怒りを覚えるはずはないんですが。レイストリンに対する不定形な苛立ち、怒りにはけぐちを与えたいだけではないのですか?
The historian stood within the doorway. His ageless face bore no expression as his gray-eyed gaze swept the room, taking in everything, everyone with a minute attention to the detail that his pen would soon record.
年代史家が室内にはいってきた。灰色の目が室内をさっと見わたしたが、年齢を超越したその顔にはなんの表情も浮かばなかった。かれは一瞬にしてすべてを見てとり、全員の顔を見つめてすぐのちに、自分のペンで記録されるべき詳細まで見てとった。
It went from the flushed and angry face of Tanis, to the proud, defiant face of the elf, to the weary, patient face of the dying cleric.
アスティヌスの視線はタニスの怒りで真っ赤になった顔から、黒エルフの傲慢で挑戦的な顔に移り、それから死にゆく僧侶の疲れはてた忍耐強い顔を見つめた。
“Let me guess. You were discussing Raistlin Majere.”
「あててみせようか。あなたがたはレイストリン・マジェーレの話をしていたのだろう」
“It is true,” Dalamar said. “I called you here.”
「そのとおりです」ダラマールが言った。「わたしがあなたがたをここにお呼びしたのです」
“Proceed,” Astinus said in his deep, cool voice.
「続けなさい」アスティヌスが深みのある冷静な声で言った。
Dalamar was silent for a moment, his gaze going back once again to the fire. When he spoke, he did not look up.
ダラマールはしばらくのあいだ黙って、またもやじっと炎を見つめている。やがて口を開いたが、目はあげないままだ。
“Our worst fears are realized,” he said softly. “He has been successful.”
「われわれがもっとも恐れていたことが現実となりました」静かに言った。「あの方は成功しました」
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