2016年7月19日火曜日

伝説5巻p180〜《共感》

TEST OF THE TWINS p103
“Raistlin has entered the Abyss. He and Lady Crysania will challenge the Queen of Darkness.”

伝説5巻p180
「レイストリンは<奈落>にはいっていったのです。あの方とレディ・クリサニアは<暗黒の女王>に挑戦するのです」

Tanis started at Dalamar in disbelief. then he burst out laughing. “Well,” he said, shrugging, “it seems I have little to worry about. The mage has sealed his own doom.”

 タニスは信じられないというようにダラマールを見つめた。それから、げらげらと笑いだした。「ほう」肩をすくめる。「それなら、心配することはないじゃないか。あの魔法使いは自分の運命を自分で封じたんだ」

But Tanis’s laughter fell flat. Dalamar regarded him with cool, cynical amusement, as if he might have expected this absurd response from a half-human.

 だが、タニスの笑い声はむなしくやんだ。ダラマールは冷ややかに、おもしろがるような目でかれを見ている。まるでこの半人間からこういうとんでもない反応がおこると前もって察知していたかのようだった。

“Well, how in the Abyss do we stop him?” realizing what he’d said, Tanis’s flush deepened.

「で、<奈落>にかけて、いったいどうやってわれわれはやつを阻止するんです?」自分の発言の意味をさとって、タニスの顔の紅潮がいっそう深まった。

“I’m sorry,” he he muttered. “I don’t mean to make this a joke. Everything I’m saying seems to be coming out wrong.”

「すまんな。冗談を言うつもりはなかった。おれがしゃべることはみな、まずい方向にいっちまうらしい」

“Therefore, it is his plan to draw her out, to bring her back through the Portal and onto the world--“

「レイストリンの計画は女王をおびきだすことなのです。あの<扉>からこちらの世界にこさせ――」

“That’s madness,”

「狂気の沙汰だ」

***

 5巻後半に入り、再登場したタニスの嫌な奴ぶりに、かなり苛々させられました。どうしてこの人、作中ではみんなに愛され尊敬されてるんでしょうね?(のちに、我らがグンター卿が解説してくれますけど)
 しかしここに来て道化の役がつきました。過去組がどんな経験をしてきたか知らない一般人代表として、度肝を抜かれてみせるがよろしい。


“You know Lord Kitiara I believe, Half-Elven?”
Tanis choked, coughed, and muttered something.
“I beg your pardon?”
“Yes, damn it, I know her!”

「あなたはキティアラ卿をよくご存知だと思いますが、ハーフ・エルフどの?」
 タニスは息をつまらせて咳こみ、何ごとかつぶやいた。
「なんと言われました?」
「ああ、くそったれ、おれはよく知ってるとも!」

“Now, it seems, she thinks he has a chance to win. And Kit will always try to be on the winning side.”

「いまや彼女は、レイストリンにも勝ち目があると考えているようです。そしてキットはつねに勝者の側にいたがる性格です」

“Kit?” it was Tanis’s turn to look amused. Dalamar sneered slightly.

「キットだと?」今度はタニスの方がおもしろがるような表情になっていた。ダラマールは軽くせせら笑った。

“Oh, yes, Half-Elven. I know Kitiara every bit as well as you do.”

「ああ、そうですとも、ハーフ・エルフどの。わたしはあなたと同じくらいよくキティアラを知っているのですよ」

But the sarcastic tone in the dark elf’s voice faltered, twisting unconsciously to one of bitterness. his slender hands clenched. Tanis nodded in sudden understanding, feeling, oddly enough, a strange kind of sympathy for the young elf.

 だが、黒エルフの声にあらわれていた皮肉っぽい調子はぐらつき、意識せぬうちに苦々しいものに変わった。ダラマールの細い両手がこぶしをかためた。不意に事情をさとり、タニスはうなずいた。奇妙なことに、かれはこの若いエルフに同情ともいえる念を感じていた。

“So she has betrayed you,”

「では、彼女はきみをも裏切ったわけだな」

“I never trusted her,” he said coldly, but he turned his back upon them and stared intently into the flames, keeping his face averted. “I knew what treachery she was capable of committing, none better. This came as no surprise.”

「わたしは彼女を信じてはいなかった」黒エルフは冷たく言い放ち、一同に背を向け、顔をそむけたまま一心に炎を見つめていた。「わたしは彼女がどんな裏切りでも犯すということを知っていました。だからそれは別段驚くことではなかった」

“Who told you this?” Astinus asked abruptly.

「きみにそれを告げたのは誰だね?」だしぬけに、アスティヌスがたずねた。

“Lord Soth, the death knight, told me.”

「ソス卿――死の騎士――が教えてくれたのです」

“Soth?” Tanis felt himself losing his grip on reality.

「ソスが?」タニスは現実への把握力を失ったような気分になった。

Frantically his brain scrambled for a handhold. Mages spying on mages. Clerics of light aligned with wizards of darkness. Dark trusting light, turning against darkness. Light turning to the dark....

 かれの脳みそは死にものぐるいで手がかりを求めてもがいていた。魔法使いが魔法使いをスパイする。光の僧侶が闇の魔法使いに加担する。闇が光を信頼し、闇に立ち向かうようになる。光が闇に寝返り……

“He wants her dead,”

「ソスはキティアラが死ぬことを願っているのです」

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