2016年7月11日月曜日

伝説5巻p76〜《かわいい石》

TEST OF THE TWINS p40
Once, long ago, Raistlin had befriended the gully dwarf. Now she stared up at the starlit sky with empty, sightless eyes. Dressed in filthy, ragged clothing, her small body was pitifully thin, her grubby face wasted and gaunt.

伝説5巻p76
 かつて、遠い昔、レイストリンはこのどぶドワーフと友だちだった。いま、ブープーはうつろな何も映らない目で星空を見あげていた。汚いぼろの服を着た小さな身体はいたましいほどに瘦せこけ、汚れた顔は衰弱し、げっそりとやつれていた。

Around her neck was a leather thong. Attached to the end of the thong was a stiff, dead lizard. In one hand, she clutched a dead rat, in the other she held a dried-up chicken leg;

 首に一本の皮紐がかかっており、その端には、死んでかたくなったネズミがくっついていた。ブープーは片手に死んだネズミを握りしめ、もういっぽうの手にはひからびた鶏の足を持っていた。

As death approached, she had summoned up all the magic she possessed, Tas thought sadly, but it hadn’t helped.

 死に瀕したときに、自分が知っている魔法を全部使おうとしたんだ――タッスルは悲しい気分で考えた――でも、どれも役にたたなかったんだ。

“I wonder how she came to live this long? The bodies we saw back in Solace must have been dead months, at least.”

「どうしてこれほど長く生きていられたんだろう? おれたちがソレースで見た死体は少なくとも死んでから数ヶ月もたっていたぞ」

“Maybe Raistlin protected her,” Tasslehoff said before he thought.

「きっとレイストリンが守ってやってたんだよ」考えるよりはやく、タッスルホッフは言っていた。

“Bah! It’s just coincidence, that’s all,”

「ばかな! ただ運がよかったんだ、それだけだ」

***

 目の前でニムシュを殺された記憶もまだ生々しいでしょうに、とっさにこの答えが出てくるタッスル。やっぱり賢い子です。


Tas continued to stare at him sorrowfully.

 タッスルは悲しげにキャラモンを見つめつづけた。

“There’s nothing left alive to bother her anyway, Tas,”

「どのみち、ブープーに悪さをするような生き物はもう何もいないんだ、タッスル」

then, seeing the grieved expression on the kender’s face, Caramon slowly removed his own cloak and carefully spread it over the emaciated corpse.

 それから、ケンダーの顔に浮かぶ悲嘆に満ちた表情を見て、のろのろとマントを脱ぎ、痩せ衰えた死骸の上に丁寧にかけてやった。

“Good-bye, Bupu,” Tas said slowly.

「さよなら、ブープー」タッスルは静かに言った。

Patting the stiff little hand that was tightly clutching the dead rat, he started to pull the corner of the cloak over it when he saw something flash in Lunitari’s red light.

 そして、死んだネズミをしっかりと握りしめている硬直した小さな手をそっとたたいてやり、マントの端をひっぱってかけてやろうとしたとき、ルニタリの赤い光を受け、きらりと光るものが見えた。

Carefully, he pried the gully dwarf’s death-stiffened fingers apart. The dead rat fell to the ground and--with it--an emerald.

 慎重に、どぶドワーフの死んで硬直した指をこじあける。死んだネズミが地面に落ち――それといっしょに――ひと粒のエメラルドが落ちた。

Tasslehoff, caching sight of a brilliant, colorful flash, crept closer. “What is it?”

Bupu shrugged. “Pretty rock,” she said without interest, searching through the bag once more.
“An emerald!” Raistlin wheezed.
Bupu glanced up. “You like?” she asked Raistlin.
“Very much!” the mage gasped.
“You keep,” Bupu put the jewel in the mage’s hand.

 タッスルホッフは、まぶしく鮮やかな光を見とがめてはい寄った。「それ、なんだい?」
 ブープーは肩をすくめた。「かわいい、石」興味なさそうに言って、ふたたび袋の中をかきまわす。
「エメラルドだ!」レイストリンは喉をしぼった。
 ブープーが目をあげた。「あなた、すき?」レイストリンにたずねる。
「とっても!」魔法使いはあえいだ。
「あなた、持ってて」ブープーは宝石を魔法使いの手におしこんだ。

***

 これまで何とも思わなかったんですが、レイストリンはなぜエメラルドが「すき」だったんでしょうね?魔法の小道具に加工したわけでもなく(そもそもそういう小道具は軽蔑していました)、お金に困ったときにも売りもせず、この時まで大事に持っていたってことは、本当にただ綺麗だから欲しかった?そんな意外な一面もあったんでしょうか。…と思いながら6巻を先取りしておりましたら、ちゃんとタッスルの勘は当たっていました。


“So Raistlin was here,” Tas murmured. “He gave this to her, he must have! But why? A charm...a gift?...”

「じゃあ、レイストリンはここにいたんだ」タッスルはつぶやいた。「これをブープーにあげたんだ、きっとそうだ! でもどうしてだろう? お守りとしてかな……贈り物として?……」

***

“Here, Bupu. Look, ‘pretty rock.’ Take it, keep it! It will protect you.”
 「ほら、ブープー。これだ、『かわいい石』だよ。これをとるんだ、持ってるんだ! これがきみを守ってくれるから!」

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