2016年7月25日月曜日

伝説5巻p244〜《(旧友たち)》

TEST OF THE TWINS p141
“I do not know by what sorcerous ways you have conjured up my name, Black Robe, but, speak it once more and it will go badly for you. We deal shortly with witches in Solace.”

伝説5巻p244
「どういう魔法でわたしの名を知ったかはわからんがな、黒ローブ、もう一度言ってみろ。きさまにとっては面白くないことになるぞ。ソレースでは魔女どもに寛大な扱いはせぬからな」

***

"conjure up"=魔法を使ったかのように作り出す、想像して心に浮かべる、とライトハウス英和辞典にはありますが、”conjure”という動詞はもともと名前に関する魔術を意味するようですよ。

https://twitter.com/MuseeMagica/status/692702732247937024


We are in a Hall of Judgment, Raistlin saw, momentarily dizzied by the sudden change.

 法廷だ――突然の変化に目のくらむ思いをしながら、レイストリンは思った。

His father, a poor woodcutter, sat in a corner, his shoulders bent, that perpetual look of worry and care on his life.

 父親が――あわれな木こりが――隅の席に座っていた。肩をがっくりと落とし、顔には消えることのない心労が浮かんでいる。

Beside him, Crysania cried out, “Elistan!”

 レイストリンの横で、クリサニアが悲鳴をあげた。「エリスタン!」

Dressed in the gray robes of Gilean, God of Neutrality, the judge took his place behind the podium and turned to face the accused.

 中立神ギレアンの灰色のローブをまとった裁判官は法壇の向こうの席につき、被告人に顔を向けた。

“Tanis!” Raistlin cried, taking a step forward.

「タニス!」レイストリンは叫び、一歩前に踏みだした。

“Flint?” Raistlin grabbed the dwarf by the arm, “Don’t you know me?”
“And don’t touch the bailiff!” Flint roared, incensed, jerking his arm away.

「フリント?」レイストリンはドワーフの腕をつかんだ。「ぼくがわからないのか?」
「廷吏にさわるんじゃない!」フリントは激怒して吠え、腕をもぎ離した。

“Now, who brings the charge against these two?”
“I do,” said a knight in shining armor, rising to his feet.

「さて、この二人を告発したのは誰だ?」
「わたしです」きらめく鎧を身につけた騎士が立ちあがった。

“Very well, Sturm Brightblade,”
“you will have a chance to present your charges. And who defends these two?”

「よろしい、スターム・ブライトブレイド」
「告訴状を提出するがいい。この二人の弁護人は誰だ?」

“Me! Here, Tanis--uh, your honorship! Me, over here! Wait. I--I seem to be stuck....”

「ぼくです! ほら、タニス――ええと、裁判長閣下! ぼくです、ここにいる! ちょっと待って。ぼく――つぶれちゃいそうだ……」

“The Black Robed one spoke the name of Paladine”
“But when she drank that witch’s brew, she was healed!”

「黒ローブのほうはパラダインの名を口にしておりました」
「しかし、この男が煎じたものを飲むと、それが癒えたのです!」

“No!” cried Crysania, rising unsteadily to her feet.
“I am cleric of Paladine--“

「ちがいます!」クリサニアは叫び、よろよろと立ちあがった。
「わたしはパラダインの僧侶なのです――」

Performing a pantomime.
Tas giggled.
“What are you doing? How can I possibly get you off if you go around telling the truth like that?”

「パントマイムをやってたって、そう言うつもりだったんです」
 タッスルはくすくす笑う。
「いったい何をやってるのさ? そんなふうに本当のことをしゃべってたら、いったいどうやって助けてあげられるっていうんだ!」

“What is this mockery?”
“I don’t know, but I’m doing to put an end to it.”

「いったいこれはなんのおふざけなの?」
「わからない。だがもう終わらせてやる」

“Silence, all of you.” His soft, whispering voice brought immediate quiet to the room. “This lady is a holy cleric of Paladine! I am a wizard of the Black robes, skilled in the arts of magic--“

「静粛に、みなさん」レイストリンのやわらかなささやき声で、室内は即座に静まり返った。
「ここのご婦人はパラダインの聖なる僧侶なのです! ぼくは黒ローブの魔法使いで、魔法の技に――」

“Oh, do something magic!” the kender cried, jumped to his feet again.
“Yes, show us some magic, wizard.” Tanis called out over the hilarity in the Hall.

「へえ、何か魔法をやって見せてよ!」ケンダーが叫び、またぴょんと立ちあがった。
「よし、その魔法とやらを見せてみよ、魔法使い」法廷の笑いの渦に負けない大声でタニスが言った。

Kitiara’s voice rang out above the others, strong and powerful. “Perform some magic, frail and sickly wretch, if you can!”

 力強く元気のいいキティアラの声が一段と大きく響きわたる。「できるものなら魔法をやってごらん、ひ弱で病気のくずめ!」

Raistlin’s tongue clove to the roof of his mouth.
“Hah! I do not need to prove myself to such as you--“

 レイストリンの舌が口蓋にくっついた。
「ふふん! おまえたちのような者どもに身の証をたてる必要などない――」

Spell words slithered from his grasp.

 レイストリンの頭から呪文の文句が抜け落ちていった。

“Burn them.”

「この二人を燃やせ」

***

<女王>の悪意、嘲りが最高潮に達する法廷シーン。もしも映像化されたら、どれほど滑稽でおぞましい演出になるんでしょうか。さらっと流そうと思ってたんですが、原文を開けてみたら”charge”に”defend”、”bailiff”に”honorship”と、法廷用語が面白くて長々と取り上げてしまいました。

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