2016年7月21日木曜日

伝説5巻p199〜《杯》

TEST OF THE TWINS p114
“And so this is what comes of his courageous words and promises,”
“Did you really expect otherwise?”

伝説5巻p199
「では、これがあの者の勇敢なる言葉と約束の結果というわけだな?」
「ほかにどうなると思っていたのだね?」

“And he makes no secret of the fact that he fears your brother more than death itself. So is it any wonder that he chooses now to fight on Raistlin’s side rather than the side of a bunch of feeble old wizards who are quaking in their boots?”

「それにあの者は。そなたの弟を死そのものよりも恐れていることをいっこうに隠しておらぬ。それゆえ、手をこまねいてただ震えているばかりのめめしい老魔法使いどもの側に立つよりは、レイストリンの側に立って戦うことをあの者が選んだとしてもなんの不思議もあるまい?」

“But he stood to gain so much!”

「だがあの者はとてつもなく多くのものを手に入れられたはず!」

And you would have known other rewards, as well, Dark Elf. Kitiara added silently, pouring herself a glass of red wine.

 そのうえもっとほかの報酬も得られたはずだ、黒エルフ。自分で赤ワインを杯に注ぎながら、キティアラは胸のなかでつぶやいた。

What of our plans? You ruling with the staff, I with the sword.

 われわれの計画はどうなるのだ? おまえはその杖を使い、わたしは剣を使って統治するという計画は。

Driven the elves from their homeland--your homeland! You would have gone back in triumph, my darling, and I would have been at your side!

 エルフどもをエルフ郷から――おまえの故郷から――追い出すことも! おまえは勝利の凱旋をすることもできたのだぞ、わが愛しき者よ。わたしはおまえの側についただろうに!

***

“darling”なんて言葉、記憶にある限り初めて見ましたよ。それもキティアラ様の口から!”my darling”って!
“I would have been at your side”って、「わたしはおまえの傍にいただろうに」とも読めます。そこまで。そこまで想っていながら何故ソス卿にころりと騙されてしまうのか二人とも。それはもちろん、

“The ones we love most are those we trust least.”
「われわれは、最愛の者をもっとも疑う性なのでしょう」

「だからそれは別段驚くことではなかった」と語るダラマールにしても。最初はお互いのことを信じきっていた、潮目が変われば相手は自分を裏切るだろうと信じていたくせに、今傷ついているのは何故かなんて考えもしないのでしょうねこの人たちは。

 そういえば、大昔にこんな文章でこの二人を引き合いに出したのを思い出しました。ウィザードリィ#4妄想


The wine glass slipped from her hand. She tried to catch it--Her grasp was too hasty, her grip too strong. The fragile glass shattered in her hand, cutting into her flesh. Blood mingled with the wine that dripped onto the carpet.

 ワインの杯がキティアラの手からすべり落ちた。キティアラはそれを受けとめようとした――だがあまりに握るのがはやすぎ、力が強すぎた。もろい杯は彼女の手のなかで砕け、肌を切り裂く。血とワインがまざりあい、絨毯の上に落ちた。

“You know I detest these fragile elf-made things! Get them out of my sight! Throw them away!”

「ああいうエルフがつくった壊れやすいものをわたしが嫌っていることは知っているだろう! こういうものをわたしの目にふれさせるな! 投げ捨ててしまえ!」

The servant ventured a protest. “But they are valuable, Lord. They came from the Tower of High Sorcery in Palanthas, a gift from--“

 召使いは大胆にも抗弁した。「ですがあれは非常に貴重なものなのです、閣下。パランサスの<上位魔法の塔>から贈られたものなのです――」

***

 なんて大胆な召使いさん。原文、”a gift from--“の続きは、<上位魔法の塔>の誰から贈られたのかを言おうとしていたのかもしれません。塔主たる異父弟、それとも……?


“I said get rid of them!”

「捨ててしまえと言ったのだ!」

“Well,”
“What do we do to stop Dalamar and my brother in this madness?”

「さて」
「狂気に駆られたダラマールとわが弟を阻止するには何をすればいい?」

“You must attack Palanthas.”

「パランサスを攻撃しなければならぬ」

“I believe it can be done!”
“”It is good to see you have not lost your touch,” said Lord Soth, his hollow voice echoing through the map room.

「これなら、必ずうまくいく」
「そなたの腕が落ちていないのを見ることができてよかった」ソス卿のうつろな声が地図室のなかに響きわたった。

Kitiara replied, pretending to be totally absorbed in the map beneath her feet. She stood upon the place marked “Sanction,” looking into the far northwestern corner of the room where Palanthas nestled in the cleft of its protective mountains.

 足下の地図にすっかり心を奪われているふうを装いながら、キティアラは答えた。彼女は「サンクション」と記された場所に立ち、部屋の北西の隅の、防御壁となっている山脈の割れ目にパランサスがおさまっている場所を見つめていた。

Following her gaze, Soth slowly paced the distance, coming to a halt at the only pass through the rugged mountains, a place marked “High Clerist’s Tower.”

 その視線をたどりながら、ソス卿はゆっくりと離れていき、険しい山岳を通るただ一本の小道のところにきて止まった。そこには「大司教の塔」と記されていた。

“The Knights will try to stop you here, of course,”
“Where they stopped you during the last war.”

「むろん、騎士団はここでそなたを阻止しようとするだろう」
「あの最後の戦のおり、かれらがそなたを阻止した場所だ」

Kitiara grinned, shook out her her curly hair, and walked toward Soth. The lithe swagger was back in her step. “Now, won’t that be a sight? All the pretty Knights, lined up in a row.”

 キティアラはにやりと笑い、巻き毛の頭を振るとソス卿のほうへ歩いてきた。その足どりはしなやかで尊大だった。「そら、あれが見えないか? かわいい騎士どもが一列に整列しているのが」

Standing on the High Clerist’s Tower, she ground it beneath her heel, then took a few quick steps to stand next to Palanthas.

 キティアラは<大司教の塔>の上に立ち、それを踵で踏みにじった。それから足早に数歩歩いて、パランサスの横に立った。

***

 傷ついた女の顔から、狡猾な指揮官に様変わりしてみせるキティアラ様。しなやかにして尊大。やはり貴女は戦場にあってこそ美しいのです。その点だけはソス卿に同意しないでもないですが…いや、やはり駄目だ。誰でもいいからこのデスストーカーをなんとかしてーー!

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