“Get a grip on the impatient human half of your nature, Half-Elven,” Astinus remarked, still writing in firm, black strokes. “And you, Dark Elf, began at the beginning instead of in the middle.”
伝説5巻p171
「そなたの性質の半分、気短な人間のほうを抑えるのだな、ハーフ・エルフよ」ゆるぎない筆致で黒い文字を綴りながら、アスティヌスが言った。「それからそなたもだ、黒エルフよ。話を途中からではなく、ちゃんとはじめからするがよい」
“Or the end, as the case may be,” Elistan remarked in a low voice.
「もしくは終わりから、ということになるかもしれませんが」低い声でエリスタンが言った。
“Lady Crysania was captivated by Raistlin. And, if the truth he told, he was attracted to her, I believe.”
「レディ・クリサニアはレイストリンの虜になっているのです。そして、もしあの方のおっしゃったことが本当だとすれば、レイストリンもレディ・クリサニアに惹かれていたのだとわたしは思います」
“Who can tell with him? Ice water is too hot to run in his veins.”
「しかし、あの方がどうなったのかは誰にもわかりません。あの方の血管を流れるには氷水でも熱すぎるくらいなのです」
Kitiara!
キティアラ!
She looked down on him from the back of her blue dragon, surrounded by her minions, lordly and powerful, strong and ruthless....
部下たちに囲まれ、ブルー・ドラゴンの背の上から、彼女はタニスを見おろしていた。威風堂々とした態度、力があり情け無用の……
She lay in his arms, languishing, loving, laughing....
彼女はタニスの腕のなかにいた。恋い焦がれた目をして、愛情たっぷりに笑っている……
Wrapped up in his own guilt, his own shame, his own wretchedness, Tanis did not notice that Dalamar, too, was having trouble with his countenance which was pale, rather than flushed.
みずからの罪悪感、恥ずかしさ、みじめさにとらわれたタニスは、ダラマールもまた赤らむというよりは蒼白になった顔をもてあましているのに気づかなかった。
He did not hear the dark elf’s voice quiver
when he spoke the woman’s name.
黒エルフがその女性の名を口にしたときに、その声が震えたのにも気づいていなかった。
***
She lay in his arms=彼女はタニスの腕のなかに(横たわって)いた。
こういう場面は原文よりもぼかしてありますね。児童文学という扱いだからでしょうか。
“You betrayed him, your Shalafi?”
「ではきみはやつを裏切ったのか、きみのシャラーフィさまを?」
“It is a dangerous game I play, Half-Elven.”
「わたしが参加しているのは危険な勝負なのです」
“They fear him--all of the Orders fear him, the White, the Red, the Black. Most especially the Black, for we know what our fate will be should he rise to power.”
「かれらはレイストリンを恐れているのです――すべての<教団>があの方を恐れています。白も、赤も、黒も。とりわけ、黒の者たちがいちばん恐れています。なぜなら、レイストリンが力を強めればわれらの運命がどういうことになるかを知っているからです」
As Tanis stared, the dark elf lifted his hand and slowly parted the front closure of his black robes, laying bare his breast.
タニスが見つめる前で、黒エルフは片手をあげ、黒いローブの前を開いて、むきだしの胸をさらけだした。
“The mark of his hand,” Dalamar said in an expressionless tone. “My reward for my treachery.”
「レイストリンの手の跡です」ダラマールは無表情な声音で言った。「わたしの裏切りへの報いです」
Tanis could see Raistlin laying those thin, golden fingers upon the young dark elf’s chest, he could see Raistlin’s face--without feeling, without malice, without cruelty, without any touch of humanity whatever--and he could see those fingers burn through the flash of his victim.
タニスの目には、レイストリンがこの若い黒エルフの胸にあの細い金色の指を置いているのが見えるようだった。レイストリンの顔――なんの感情もない、悪意も残虐さも、なんにせよ人間らしい感情の動きがかけらもない顔――が、その五本の指が生贄の肉を焦がすさまを見すえている。
***
いつもは傷跡をさらすためにローブを引き裂いているダラマール。ローブ何枚持ってるの?とか、そのつど繕ってるの?とか、よくネタにされてますね。さすがに病床のエリスタンの前ではお行儀よく開いてみせました。
The cleric must have known much of this already.
この僧侶は、とうの昔にこうしたことを知っていたにちがいない。
“We counted on this,”
“Par-Salian said that there was no way Raistlin could change history--“
「われわれもそれをあてにしておったのだ」
「パー=サリアンはレイストリンが歴史を変えることなどできるはずがないと言って――」
***
パー=サリアンどころか、エリスタンまでもが、過去でクリサニアが死ぬことをあてにしていたとは。立場ばかりでなく、この二人は結構似た者同士ですね。これくらいでなければ、白の教団の長なんて務まらないのでしょう。
“I don’t care what’s become of Raistlin or--“
「レイストリンがどういうことになろうが、おれはいっこうにかまわん」
“You will care what becomes of Raistlin, Tanis Half-Elven,” Dalamar’s smooth voice interrupted him,
「あなたはじきにレイストリンがどうなったかを気にするようになりますよ、ハーフ・エルフのタニス」ダラマールのなめらかな声がかれを遮った。
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