He was not a comely boy,
and he knew it--as he knew so much about himself that is not often given children to know.
伝説5巻p189
少年は端正な顔だちというわけではなく、本人もよくそれを心得ていた――ふつう子どもはあまり自分のことなどわかっていないものだが、かれは自分のことをとてもよく知っていた。
But then, he spent a great deal of time with himself, precisely because he was not comely and because he knew too much.
かれはたいていの時間を一人きりで過ごした。その理由は、かれが端正な顔だちでないから、そして自分でそれをわかりすぎるほどよくわかっていたからだった。
He may not have been walking alone, but in a way he was more alone with Caramon than without him.
たしかに一人ぼっちで歩いているわけではない。だが、ある意味では、キャラモンといっしょにいるほうだ、そうでないときよりもよほど孤独に感じられるのだった。
“Hey, Caramon, wanna play King of the Castle?” a voice yelled.
「よう、キャラモン、<お城の王様>をやらないか?」声がかかった。
“You want to, Raist?” Caramon asked, his face lighting up eagerly.
「やりたいかい、レイスト?」やりたそうに目を輝かせて、キャラモンがたずねる。
he knew, too, that the other boys would argue about whose team had to take him.
それにほかの少年たちが、レイストリンを誰のチームに入れなければならないかでもめることもわかっていた。
***
痛い場面オンパレードの5巻後半の中でも、個人的に最もきついシーンです。子供の頃、休み時間の球技で、最後まで持て余された私が自分のチームに入れられた時のチームメイトの落胆の表情。こっちだって好きでやってるんじゃないのに、休み時間は外で元気よく遊びましょうなんて決まりがなければ、教室や図書室で本を読んでいたいのに、とか思い出したらああもう自分も内なる<奈落>に落ちそうです。
先に進みましょうか…きついことは変わりないんですけれど。
“No. You go ahead, though.”
「いやだ。でも兄さんは行っておいでよ」
“Oh, that’s all right, Raist. I’d rather stay with you.”
Raistlin felt his throat tighten, his stomach clenched.
「いや、大丈夫だよ、レイスト。おれもおまえといっしょにいるほうがいい」
レイストリンは喉がぐっとしめつけられ、胃のあたりがきゅっとしこるのを感じた。
“I don’t need you! I don’t want you around! Go ahead! Go play with those fools! You’re all a pack of fools together! I don’t need any of you!”
「兄さんがぼくについてる必要はないんだ! 兄さんにくっつきまわってもらいたくないんだ! さっさと行っちゃってよ! あのうすらばかどもめと遊びに行けばいいんだ! みんないっしょだ。うすらばかの集団じゃないか! ぼくには兄さんたちなんて必要じゃないんだよ!」
Soon, the lure of the magic drew him away from the dirt and the laughter and the hurt eyes of his twin. it led him into an enchanted land where he commanded the elements, he controlled reality....
まもなく、魔法の魅力が土埃や笑い声や双子の兄の傷ついた目からかれの心を引き離していき、魅惑的な魔法の世界にいざなっていった。そこではかれがさまざまなものに命令できる。かれが現実を制御することができるのだ……
“Leave me alone,” he said coldly, and such was the way he spoke and the look in his eye that, for an instant, the two boys were taken aback.
「ぼくを放っておいてくれ」レイストリンは冷ややかに言った。その口調と眼差しに、一瞬二人の少年はひるんだ。
But now a crowd had gathered. The other boys left their game, coming to watch the fun. Aware that others were watching, the boy with the stick refused to let this skinny, whining, sniveling bookworm have the better of him.
が、いまではもう野次馬が集まってきていた。ほかの少年たちが遊びをやめ、こちらの気晴らしを見物しにやってきたのだ。棒を持った少年は人目を意識して、このやせっぽちであわれっぽい声を張りあげる、めめしい本の虫に負けることを拒んだ。
“Caramon!” he cried. “Caramon, help me!”
「キャラモン!」レイストリンは叫んだ。「キャラモン、助けてよ!」
“You don’t need me, remember.”
A rock struck him in the head, hurting him terribly. And he knew, although he couldn’t see, that it was Caramon who had thrown it.
「おまえにはおれなど必要ないんだろう、たしか」
レイストリンの頭に石があたり、かれはひどい傷を負った。見えなくてもわかっていた。その石を投げつけたのはキャラモンなのだ。
“Raistlin!” she whispered, holding his small hand in her own.
The boy opened his eyes....
The man, dressed in black robes, sat up.
「レイストリン!」少年の小さな手を握りしめ、クリサニアはささやいた。
少年は目をあけた……
黒ローブをまとった男が身を起こした。
“This is how she fights me, striking at me where she knows I am weakest.”
「これこそ女王がぼくと戦うやり方なのだ。ぼくが一番の弱点としているところでぼくを打ちのめすというのが」
“You fought for me. You defeated her.” He drew her near, enfolding her in his black robes, holding her close.
「きみはぼくのために戦ってくれた。きみが女王を打ち負かしてくれたのだ」レイストリンはクリサニアを引き寄せ、黒ローブで包みこんでしっかりと抱きしめた。
Still shivering, Crysania laid her head on the archmage’s breast, hearing his breath wheeze and rattle in his lungs, smelling that sweet, faint fragrance of rose petals and death....
クリサニアはまだおののきながら、大魔法使いの胸に顔を埋めた。ぜいぜいというかれの肺の苦しげな息づかいが聞こえ、薔薇の花びらと死の甘美な芳香がかすかに漂った……
幼少期レイストリンが可愛いと同時に切ないです。
返信削除強制外遊びや体育がひたすら苦痛だったのを思い出します。
翻訳も秀逸で、"Go ahead!"を「さっさと行っちゃってよ!」と訳すところにセンスを感じます。
ここにも仲間が一人(涙)
返信削除「さっさと行っちゃってよ!」
「さあ!」
「協力して」
これらが全て元は"Go ahead"なんですから、翻訳という技はまさしく創造ですね。お偉方にはそれがわからんのです。