2016年5月27日金曜日

伝説3巻p195〜《危機》

WAR OF THE TWINS p107
There was a glint of grim amusement in Crysania’s eyes, though she shuddered visibly at the man’s touch.

伝説3巻p195 
 クリサニアは体に触れられ、目に見えて震えていたが。その目には冷たい愉しみの色が輝いていた。

A flash of pure, white light crackled through the driving rain. The half-ogre clutched at his hand. Drawing it back with a snarl of pain, he released Crysania.

 たたきつけるように降る雨を透かして、混じり気のない白光が迸る。ハーフ・オーガーはぱっと自分の手をつかみ、痛みにうめきながら、クリサニアを離してあとずさった。

***

 凄いですクリサニア様。キャラモンが見ている通り、こんな狼藉者に遭うどころか同じ空気を吸うことすらなかったろうに、本当は恐怖しているのに。泣きも取り乱しもしないばかりか、メダリオンで威嚇してみせるときの”glint of grim amusement”、冷たい愉しみの色!まるでレイストリンが乗り移ったかのようです。


“share the spoils among us--after I’ve taken my cut, of course.”

「獲物はみんなで山分けだ――もちろん、おれがまず取り分を取ったあとだぞ」

Bur there were some young faces who frowned, glancing at each other in disquiet, shaking their heads. And there were even a few muttered comments, such as “I’ll have nought to do with a witch!” and “I’d sooner bed the wizard!”

 だが若い顔のいくつかは眉をひそめ、不安そうに互いに見交わして首を振っていた。そしてさらにいくつか、小声で交わされる言葉がキャラモンの耳に入った。「魔女とやるなんてごめんだぜ!」とか、「まだあっちの魔法使いと寝るほうがましだぜ!」とか。

Witch! There was that term again.

 魔女! またこの言葉が出てきた。

Caramon shivered, suddenly remembering with vivid clarity the time they had come into a town that was going to burn an old woman at the stake for witchcraft.

 不意に、ある町にはいったときの記憶がまざまざとよみがえってきて、キャラモンは身震いした。そこでは魔法を使ったという咎で、老女を火あぶりの刑に処そうとしていた。

He recalled how his brother and Sturm, the ever noble knight, had risked their lives to save the old crone, who turned out to be nothing more than a second-rate illusionist.

 レイストリンと高潔の騎士スタームとが生命の危険を冒してその皺くちゃの老婆を助けたことが思い出された。結局、その老婆は二流の幻術師にすぎないことがわかったのだが。

***

 魔女ってそれほどまでに、男の魔法使いと比べても忌まわしい存在ですか。”witch”は通常「魔女」と訳されますし、そのとおりに女の魔法使い全般を指すことも多いですが、男のウィッチもいます。なんとなく、wizard, magus, sorcerer, warlockなどと比べると知的でない、地位の低いイメージはあります。
 男の魔法使いがwizardで女がwitchと書いてあるライトハウス英和辞典、どうにかすれ。


She’s always been sheltered, protected from things like this. Perhaps she doesn’t realize what dreadful acts these men are capable of committing.

 彼女はいつでも守られてきた。このような事態から常に保護されてきたのだ。ここにいる男たちがどんなひどいことを行えるものか、おそらくクリサニアはわかっていまい。

She knows….The gods help her. She knows….

 彼女は知っているのだ……神々が守ってくださるだろう。彼女は知っている……

***

 この”The gods help her.”「神々が守ってくださる」という確信ではなく、「神よ助け給え!」という絶望の叫びに見えます。話の流れから言っても。


But all he could see in his mind as they rode were those dark, terror-filled eyes, pleading with him for help.

 だが、馬の背に揺られているあいだ、心の目に映っていたのは恐怖に満ちた黒い瞳だけだった。自分に向かって助けてと懇願する目。

And Caramon knew, with sick certainty, that no help would come.

 そしてキャラモンは、むかつくような確信をもって悟った。助けは決してきはしないことを。

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