“Why does he want to kill me?”
“Kill you?” the dwarf cackled. “He doesn’t want to kill you! He thinks you’ll win!”
伝説2巻p302
「なぜフィスタンダンティラスがおれを殺そうとするんだ?」
「おまえを殺す?」ドワーフはげらげら笑った。「あの人はおまえを殺そうとなんかしちゃいないよ! おまえが勝つと思ってるさ!」
“‘I don’t want a slave who isn’t the best! And this will prove it. Caramon showed me what he could do against the Barbarian. That was his first test. Let’s make this test harder on him.’”
「『最高でない奴隷など欲しくはない! これではっきりするだろう。キャラモンはあの蛮人にどんなことができるかを見せてくれた。あれが最初の試験だったのだ。今度の試験はもっときついものになるだろう』」
***
レイストリンについて闇路に踏み込むために、キャラモンに課された”test”.
邦訳では<大審問>という物々しい言葉ですが、あれも原文では”the Test”でした。
“he says. Oh, he’s a rare one, your master!”
The dwarf chuckled, slapping his knees at the thought, and even Raag gave a grunt that might have been indicative of amusement.
「そう言うのさ。いやはや、あれこそ稀なるお方だよ、おまえのご主人は!」
ドワーフはそれを思い出し、くっくっと膝を打って笑った。ラアグまでもが、おもしろがっていることを示す、ぐふぐふという声をあげていた。
“I won’t fight,”
“He said you’d say that!” the dwarf roared. “Didn’t he, Raag! The very words. By gar, he knows you! You’d think you two was kin!”
「おれは闘わんぞ」
「おまえがきっとそう言うだろうと、ご主人も言っていたよ!」ドワーフは呵々大笑した。「そうだよなあ、ラアグ! まさにそう言ったんだ。神かけて、あの人はおまえのことを知りつくしてるんだ! まるで血縁があるんじゃないかと思うぐらいにな!」
“As for your friends fighting you”--the dwarf sneered--“Fistandantilus took care of that, too. After what he told them, I think they’re gonna be real eager to get in the arena!”
「おまえの友達がおまえと闘うかどうかってことについてだが」――ドワーフがせせら笑う――「これもフィスタンダンティラスがけりをつけてくれたよ。あの人が二人に話をしてくれたんだ。二人とも闘技場に出ることにさぞかし熱意を燃やしてることだろうよ!」
***
cackle(げらげら), chuckle(くっくっと), roar(呵々大笑), sneer(せせら笑う).
闘技王アラックの嘲笑のラインナップでした。ラアグも参加してます。
Caramon’s head sank to his chest. He began to shake. His body convulsed with chills, his stomach wrenched. The enormity of his brother’s evil overwhelmed him, his mind filled with darkness and despair.
キャラモンの頭ががくりとうなだれた。かれはがたがたと震えはじめた。全身が悪寒でひきつり、胃がきりきりとよじれた。自分の弟のとほうもない邪悪さにうちのめされ、キャラモンの心は暗黒と絶望にふさがれていた。
“Oh, by the way. Fistandantilus says it’s going to be a beautiful day tomorrow. A day that everyone on Krynn will long remember….”
「そうそう、ところでな。明日は上天気になるそうだ。フィスタンダンティラスがそう言ってたぞ。クリン上の誰もが長らく記憶にとどめることになるような天気だとな……」
Caramon sat alone in the dense, damp darkness. His mind was calm, the sickness and shock having wiped it clean as slate of any feeling, any emotion. He was alone. Even Tas was gone.
キャラモンはじめじめとした闇の中に一人座っていた。心は平静に澄んでいた。吐き気と驚愕があらゆる感情、あらゆる情動をきれいさっぱり洗い流してしまったのだ。かれは独りぼっちだった。タッスルまでもが行ってしまった。
There was no one he could turn to for advice, no one to make his decisions for him anymore. And then, he realized, he didn’t need anyone. Not to make this decision.
助言を求めて訪ねてゆける人はいない。かれに代わって決定してくれる人もいないのだ。だがもう、かれは誰も必要としてはいなかった。決定してもらうことも。
Now he knew, now he understood. This is why the mages had sent him back. They knew the truth. They wanted him to learn it for himself.
今やかれは知っていた。今やはっきりと理解していた。これこそ魔法使いたちがかれをここへ送り込んだ理由なのだ。魔法使いたちは真実を知っていた。かれらはキャラモンに、自力でそれをさとってもらいたかったのだ。
His twin was lost, never to be reclaimed.
Raistlin must die.
双子の弟はもういなくなってしまっていた。元に戻ることはもう決してない。
レイストリンは死ななければならないのだ。
***
英語の”evil”とはどういう意味だろう、”bad”や”wrong”,日本語の「悪」との違いはなんだろう?と戦記の最初から考えながら読んでいましたが、ここでキャラモンにとっての”evil”、絶対に存在を許せない程の忌まわしさ、というものが表れているように思います。
家族を捨て、人と交わりを絶って怪しい研究に励み、「悪い」魔法使いを倒してその力をものにすることまでは、弟の選んだ道として許容するところまで来ていたキャラモン。しかし人を騙し、利用し、裏切り、自分の手を汚さず殺し合わせることは、かれの愛する双子の弟にあってはならないことでした。
レイストリンはアラックに口止めをしなかったのですね。キャラモンが全てを聞かされ、全てを理解することを望んで、信じてすらいたのか。まったくrareなお方です。
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