The young man’s eyes were not golden, not shaped like the hourglass that had become his symbol. The skin was not tinted gold, the face was not frail and sickly.
伝説2巻p211
その若い男の目は金色でも、あの男のシンボルである砂時計の形をしてもいなかったからだ。肌も金色味を帯びてはおらず、顔も脆弱な病んだものではなかった。
The man’s face was pale, as if from long hours of study, but it was healthy, even handsome, except for look of perpetual, bitter cynicism.
この男の顔は、長い研究生活をしていたかのような青白い色だったが、健康で男前ですらあった――絶えず浮かんでいる辛辣な冷笑がなければ。
The eyes were brown, clear and cold as glass, reflecting back all they saw, revealing nothing within. The man’s body was slender, but well-muscled.
茶色の目はガラスのように冷ややかに澄み、映るものすべてをはね返すのみで、内にあるものは何もさらけ出そうとはしない。身体はほっそりしているが、筋肉は充分についている。
The black, unadorned robes he wore revealed the outline of strong shoulders, not the stooped and shattered frame of the mage.
まとっている飾りけのない黒いローブごしにはっきりとあらわれているたくましい肩の線は、あの魔法使いのうちのめされた猫背の体型とは似ても似つかない。
“Perhaps this will clear up the mystery,”
“My name, to those around here, is Fistandantilus.”
「これを言えばあなたの疑問も晴れるでしょう」
「わたしの名前は――ここの人々にとっては――フィスタンダンティラスです」
Coolly he studied her, much as he studied the small animals that came under his knife when he probed for the secrets of life itself. Just as he stripped away their skins to see the beating hearts beneath, so he mentally stripped away Crysania’s outer defenses to see to see her soul.
冷静に、レイストリンは彼女を観察した。生命の神秘を探ろうとして構えたナイフのもとにやってきた小さな動物を観察するように。小動物の皮を剥いでその下に脈打つ心臓を見るように、かれは心のなかでクリサニアの表面の砦を剥ぎとり、魂を見つめていた。
He knew she doubted, that her faith was wavering, teetering on the edge of the precipice. It would take little to shove her over the edge. And, with a bit patience on his part, she might even jump over of her own accord.
彼女が疑いを抱いていること――彼女の信仰が揺らぎ、今にも絶壁の端から落ちそうになっていることも。彼女をその絶壁から落とすには、ほんのひと押しで足りるだろう。そしてかれが少し辛抱しているうちに、自分から飛び降りてしれないくらいだった。
“Do you truly believe that of me?” Raistlin asked in the voice of one who has suffered long and then returned to find it was all for nothing.
「本気でぼくが邪悪だと考えているのですか?」レイストリンは、長く苦しんだあげくに帰ってきて、それがすべてむだだったとさとった者の声を出した。
He saw his sorrow pierce her heart. She tried to speak, but Raistlin continued, twisting the knife in her soul.
そして自分の悲哀が彼女の胸にしみとおるのを眺めた。クリサニアはしゃべろうとした。だが、レイストリンは言葉を続け、彼女の魂にナイフをねじこんだ。
Looking in them, she saw herself reflected in their mirrorlike surface. And she saw herself, not as pale, studious, severe cleric she had heard called more than once, but as someone beautiful and caring.
クリサニアはその目をのぞきこみ、その鏡のような表面に自分の姿が映っているのを見た。そしてその自分自身を見つめた。それは、かつて一度ならずそう呼ばれるのを聞いた、青ざめた、勉強熱心で厳格な僧侶ではなく、美しく愛らしい女性だった。
This man had come to her in trust and she had let him down.
この男はクリサニアを信頼しようとしていたのに、クリサニアはそれを拒否したのだ。
“You know my ambitions,”
“To you I opened my heart.”
「あなたはぼくの野心をご存じだ。ぼくはあなたには、心を開きました」
***
あああもうっ、どこで切ったらいいのかわからない、この目眩く展開! 動揺するクリサニアの前に現れたハンサムな健康体のレイストリン、怜悧極まりない観察、クリサニアの優しさを利用して絶壁に突き落とす手口!汚いぞさすがレイストリンきたない!(褒めてます)
震える仔うさぎクリサニア、逃げて超逃げて!
このくだり、元の歴史では、フィスタンダンティラスはどのようにデヌビスの信仰を揺るがし手中にしたのでしょうね。クァラスあたりを刺激し挑発させたのかな、とかいろいろ想像してみると、これはこれで面白そうです。少なくとも心臓にいいです。
そろそろまじめに英文考察します。
she had let him down.
どこかで見た表現だなと思ったら、ビートルズの『ヘイ・ジュード』でした。
Hey Jude, don’t let me down
ヘイ、ジュード、がっかりさせるなよ
洋楽の歌詞をただひたすら和訳するブログ: Beatles(ビートルズ) Hey Jude 歌詞 和訳: 様より。
クリサニアの脳内の、しょんぼりがっかりするレイストリンが目に浮かべます。騙されちゃ駄目だ、いややっぱり騙されて。
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