2016年5月8日日曜日

伝説2巻p225〜《運命の夜》

TIME OF THE TWINS p336
Very well, the Night of Doom had come.

伝説2巻p225
 その通り。<運命の夜>が来たのだ。

So this was the end of her plans, her dreams, her goals.

 それではここがわたしの目論見の終点、わたしの夢の終焉、わたしの目標の行きつく先なのだ。

She had even failed in her original intent, to draw Raistlin from the folds of darkness. He would never listen to her. Right now, probably, he was laughing at her with that terrible, mocking laugh….

 それにまた、レイストリンを暗黒の皺襞から引っ張り出すという当初の目的にも失敗してしまったのだ。今ごろかれはおそらく、クリサニアのことを笑っているだろう。あの恐ろしい、あざけるような笑い声で……

She felt warmth envelop her and the softness of velvet black robes brush against her bare arm. She smelled the sweet scent of spices and rose petals and a vaguely cloying scent of decay--bat’s wing, perhaps, the skull of some animal--those mysterious things magicians used to cast their spells.

 と、身体がぬくもりに包まれるのを感じた。黒ローブの柔らかな天鵞絨が剥き出しの腕に触れた。香辛料と薔薇の花びらの甘い香りがした。それからかすかに鼻につく腐敗の匂い――こうもりの翼か、もしかしたら何かの動物の頭骨か――魔法使いたちが呪文をかけるときに用いる不可思議な品々の匂い。

***

「レイストリンの香り」でも引用した一節。直訳すると

「と、身体を包むぬくもりと、剥き出しの腕に触れる天鵞絨の黒ローブの柔らかさを感じた。・・・」

 となりそうなところを、この文字どおり匂い立つような訳文、その芳しさと言ったら!読み込むほどにくらくらしてきます。


Either the fingers brushed the tears away ot they dried at their burning touchm Crysania wasn’t certain.

 その指が涙をぬぐい去っているのか、その燃えるような熱さで乾かしているのか、クリサニアにはわからなかった。

“Paladine,”
“thank you. My way is clear. I will not fail!”

「パラダイン」
「ありがとうございます。わたしの道が開けました。失敗はしません!」

“Fool!”
“I sould have foreseen this!”

「くそばか! これぐらい予見できなかったのか!」

“I should have known. This body, for all its strength, has the great weakness common to mankind. No matter how intelligent, how disciplined the mind, how controlled the emotions, that waits in the shadows like a great beast, ready to leap out and take over.”

「わかっているべきだったのだ。この身体は、体力はあるが、人間に共通の重大な弱点を持っているのだ。どれほど知性があり、どれほど精神を鍛練して、どれほど感情を抑えていても、あれがもの陰に潜んで待ち構えているのだ。大きなけだもののように、飛びかかってのっとろうと待っているのだ」

“I can still see her! I can see her ivory skin, her pale, soft lips. I can smell her hair and feel the curving softness of her body next to mine!”
“No!” This was fairly a shriek.

「まだ彼女の姿が見える! あの象牙色の肌、青ざめた柔らかな唇。彼女の髪の匂いがする、ぼくの身体にぴたりと寄り添うあの肢体の柔らかな感触が感じられる!」
「やめろ!」これはほとんど絶叫といってよかった。

“I would end up destroying myself”

「自滅してしまうのがおちさ」

But, before he drifted off to sleep, still sitting in the chair, he saw once more, with unwanted vividness, a single tear glistening in the moonlight.

 だが、椅子に腰掛けたままうとうとと眠りのなかへと移ろっていきながら、かれは今一度、望みもしない鮮やかさで見ていた。月光にきらりと光る一粒の涙を。

***

 悩める<過去と現在の主>。
 真面目にこのくだりや、過去の経緯についての感想も考えかけていたのに、よそ見しながらうっかり全角入力モードで打ち込んだ

“Fおおl!”

 を見て全て吹っ飛びました。大魔法使い、乱心。
(乱心してるのは自分です)

2 件のコメント:

  1. 後半のレイストリンがたまりません。怒号のように渦巻く欲望、怒り、自嘲...そして修練で全てを抑制し、訪れた静寂。押さえきれない感情が静かに溢れ出る様子は、幻想的ながらも切ないです。

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  2. ごく若い頃から自己抑制に努めていたものの、<大審問>以後、砂時計の瞳孔になってからは視覚からの誘惑とは無縁だったはずですよね。この体になって元の視力を取り戻し、クリサニアの美しさに気づいてしまってからの動揺を想像すると…よく耐えたとしか言いようがないです。

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