2016年5月15日日曜日

伝説2巻p340〜《最後の試合》

TIME OF THE TWINS p399
Istar would never live to see the sunset.

伝説2巻p340
 イスタルは生きて日没を見ることはないのだ。

He wept not so much for himself, but for those two who stood beside him, who must die this day, and for all those innocents who would perish without understanding why.

 自分のためにではない。今自分のそばに立っている今日死んでいかなければならない二人のために、理由もわからずに非業の死を遂げなければならない無実の人々すべてのために、泣けてくるのだった。

He wept, too, for the brother he had loved, but his tears for Raistlin were for someone who had died long ago.

 また、かれは愛する弟のためにも泣いていた。だがレイストリンへの涙というのは、遠い昔に死んでしまったものへの涙だった。

“Watch!” she said lightly, then spoke strange words that reminded Caramon vaguely of the language of magic. These, however, had a faint accent, almost elvish.

「まあ見てな!」快活に言うと、キイリは奇妙な言葉をいくつかしゃべった。それはキャラモンに漠然と魔法の言語を思い出させた。だが、エルフ語めいたかすかななまりも感じられた。

And, suddenly Kiiri was gone. I her place stood a gigantic she-bear.

 と、不意にキイリの姿が消えた。そして彼女のいたところに、巨大な雌熊が立っていた。

Then he remembered--Kiiri was a Sirine, gifted with the power to change her shape!

 それから、思い出した――キイリはセイレーンだった、姿を変えることのできる天性の力を授けられているのだ!

“I’ve seen you take a hit like that, get up, and eat a five-course meal. What’s the matter?”

「おれはあんたがああいう打撃を受けては立ち上がって五杯も飯を食うのを見てきたぞ。いったいどうしたことだ?」

Pheragas looked up at his friend. Seeing Caramon’s horrified gaze, he realized he understood.

 フェラーガスは友を見上げた。キャラモンのおびえきった目を見て、かれはキャラモンがさとったことを知った。

“Take…take my sword.” Pheragas choked. “Quickly, fool!” Hearing from the sounds his enemy was making that the minotaur was back on his feet, Caramon hesitated only a second, then took the large sword from Pheragas’s shaking hand.

「剣を……おれの剣を使え」フェラーガスはむせびながら言った。「早くしろ、ばか!」敵がたてる物音から、背後でミノタウロスが立ち上がったのを聞きとり、キャラモンはほんの一瞬ためらっただけだった。フェラーガスの震える手から剣を取った。

He no longer thought of escape, he had no idea--even--where he was. His warrior’s instincts had taken over. He knew one thing. He had to kill.

 もう、逃げることすら考えていなかった――今どこにいるのかさえ。戦士としての本能がすべてになっていた。知っているのはただひとつ。殺さねばならない。

But the slip had been feigned. Caramon’s sword flashed in the sunlight.

 だが、足をすべらせたと見えたのは見せかけにすぎなかった。キャラモンの剣が一閃した。

It would not bear his weight, and the Red Minotaur fell to the arena floor, caramon’s sword cleaving cleanly through the bestial head.

 痛めた膝は重みに耐えられず、赤ミノタウロスは闘技場の地面にどうと倒れた。キャラモンの剣が獣の頭をすっぱりと切り取った。

Caramon started towrd them when he caught sudden movement to his right. Quickly he turned, every sense alert as Arak hurtled past him, the dwarf’s face an ugly mask of grief and fury.

 その時、右手に突如動くものがあった。全神経を警戒させてさっとそちらを向くと、アラックが走ってかれの横を通りすぎるところだった。ドワーフの顔は悲嘆と激怒で醜くひきつっていた。

Caramon saw the dagger flash in the dwarf’s hand and he hurled himself forward, but he was too late. He could not stop the blade that buried itself in the bear’s chest.

 ドワーフの手に短剣がきらりと光るのを見てキャラモンはだっと駆け出した。が、遅すぎた。刃が熊の胸に深々と埋められるのを止めることはできなかった。

“You’ve won, Kiiri,” Caramon whispered. “You’re free.”

「きみは勝ったんだぞ、キイリ」キャラモンはささやいた。「きみはもう自由の身だ」

Gently laying her body down upon the blood-soaked arena floor, Caramon rose to his feet. He saw Pharagas’s body frozen in its last, agonized throes. He saw Kiiri’s sightless, staring eyes.

 血で濡れそぼった闘技場の地面にそっとキイリの身体を横たえると、キャラモンは立ち上がった。フェラーガスの身体が末期の苦悶に満ちた断末魔のままに凍りついているのを見た。それから、キイリのかっと見開かれた、もう何も見ていない目を。

“You will answer for this, my brother,” Caramon said softly.

「おまえにこの償いをさせてやるからな、弟よ」キャラモンは静かに言った。

***

 フェラーガスとキイリの友情と信頼もさることながら、残忍な守銭奴アラックが相棒ラアグのために示した悲嘆と憤怒が光って見えます。権力闘争に明け暮れていようと、血なまぐさい娯楽に耽っていようと、罪があろうとなかろうと、無意味に死んでいい人間などいないのです。

“Count yourself fortunate”
「幸運だと思うんだな」
“The score for the Barbarian is settled”
「これで蛮族殺しの清算がされたんだよ」
“I, too, have a score to settle with this man,”
「ぼくも、あの男にはたっぷり借りがあります」(戦記2巻より)
“You will answer for this”
「償いをさせてやる」

 勝負や賭け事に関する表現をいろいろ並べてみました。他にも思い出したら追加してみましょう。

 元の歴史において、フィスタンダンティラスがデヌビスを篭絡した手口も気になりますが、フェラーガスはどうやって引き込んだのでしょうね。またその場合、この最後の試合はどのような顛末を迎えたのでしょう。キイリと戦わされたとかでなければいいのですが。デヌビスはああなって良かったですが、フェラーガスにとっては、どちらがましな人生だったものか。

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