“When I first came, it was filled with scribes, translating the words of the gods into language so that everyone could read them. But the Kingpriest didn’t think that was necessary and--one by one--they all left, finding more important things to do. Except me.”
伝説2巻p201
「わたしがはじめてここにやって来たときは筆写人でいっぱいでした。神々の御言葉を誰もに読める言葉に翻訳していたのです。ですが神官王は、そんなことは必要ないとお考えでしたので――一人また一人と――みんな去ってしまいました。もっと役に立つ仕事を探しに行ったのです。わたし以外はみな」
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聖典を翻訳することの功罪については、語りだすとそれこそ一エントリ分の長さになるので我慢します。ですがこれだけは。語学に弱いくせに海外文学を好む者としては、翻訳者様たちには足を向けて寝られないほど感謝しております。
She had more the look of a young girl deceived by a lover.
“You talk about the old days. You have seen it change. Is it better?”
クリサニアの様子は、恋人に裏切られた若い娘のようだった。
「あなたは昔の日々のことをお話しになります。あなたはその変化をつぶさにご覧になってこられたのです。それで、よくなったのでしょうか?」
Denubis opened his mouth to say, certainly, yes, it was better.
“I--well--of course--it’s just--“
デヌビスは口を開いた。『もちろんですよ、そう、よくなったのです』そう言おうとしたのだ。
「わたしは――そう――もちろん――これは――」
“No, it is better” he said firmly, not wanting to see her young faith bruised, as his had been.
「いや、確かによくなってはいるのです」デヌビスはきっぱりと言った。かつての自分がそうだったように、彼女の若い信仰が傷だらけになるのを見たくはなかったのだ。
“The church is doing a world of good, my dear. It’s bringing order to the land and structure to society--“
“Whether socirty wants it or not,”
「教会は善なる世界をつくり出そうとしているのです。地に秩序を、社会に体系をもたらして――」
「社会がそれを求めると求めざるとにかかわらずにね」
“It’s eradicating evil,” he continued, anf suddenly the story of that knight--that Lord Soth--floated to the top of his mind, unbidden.
「悪を根絶やしにしているのです」デヌビスの意識の表面に、不意にあの騎士――ソス卿――の物語が浮かび上がってきた。
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もしここで、ソス卿の名前が話題に出ていたなら。クリサニアがここに連れてこられた原因にして、<大変動>を防ぐことができた唯一の存在。かれはこのとき贖罪の希望に満ちてイスタルに馬を駆っていたのでしょうか?
“We don’t try to help those who have lost their way find it again! We turn our backs them, calling them unworthy, or we get rid of them!”
「わたくしたちは、道を見失った人々が再びそれを見出すのに手を貸そうとはしていないのです! わたくしたちはそうした人々を恥ずべきものと呼んで背を向けるか、排除しようとするだけなのですわ!」
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なるほど、クリサニアの信仰の根本はここにあるのですね。もっとも彼女が手を貸したいのは道を見失った「人々」ではなく、たった一人なわけですが。
And then Danubis knew. Paladine gave his cleric insight. He saw the future. Blanching in horror, he shook his head.
その時、デヌビスはさとった。パラダインが僧侶に啓示を下したのだ。かれは未来を見ていた。恐怖のあまり青ざめて、デヌビスは首を振った。
“Come, Denubis, you are needed here no longer.”
Bowing his head, he reached out and took Loralon’s hand. But, as he did so, he could not help weeping….
「来なさい、デヌビス。そなたはもはやここでは必要とされていないのです」
深く頭を垂れ、かれは手を出してロラローンの手を取った。だがそれをした瞬間、かれは涙を流さずにはいられなかった……
脱線甚だしいのでこちらで語ります。今回のタイトルは「みのり」と読みます。『源氏物語』第四十帖の題です。御法とは仏典のことであり、紫の上が発願、写経した法華経の供養を執り行った後に世を去る話でもあります。
返信削除デヌビスが翻訳していた聖典<ミシャカルの円盤>と、ロラローンに導かれてこの世を後にする(亡くなるわけではないですが)ことに引っ掛けてみました。以上、自己満足終わり。