2016年4月8日金曜日

伝説1巻p125〜《黒の女卿》

TIME OF THE TWINS p70
Palantas--fabled city of beauty.
A city that has turned its back upon the world and sits gazing, with admiring eyes, into its mirror.

伝説1巻p125
 パランサス――名にしおう美の都。
『世の中に背を向けて、うっとりとおのれの鏡像に見入っている都』

Who had described it thus? Kitiara, seated upon the back of her blue dragon, Skie, pondered idly as she flew within sight of city walls.

(そう評したのは誰だったか?)キティアラは青い騎竜スカイアにまたがって空中から市壁を望みながら、なにともなくそう考えた。

The late, unlamented Dragon Highlord Ariakas, perhaps. It sounded pretentious enough.

(惜しまれることなく死んだ、あのドラゴン卿アリアカスあたりか。このもったいぶった言いまわしは、あの男の言いそうなことだ)

 “No, my pet,”

He achieved some satisfaction, however, by breathing a bolt of lightning from his gaping jaws, blackening the stone wall as he soared past, keeping just out of arrow range.

「それはならぬ」

 そして、鬱憤晴らしに、矢の射程外ぎりぎりを保って胸壁を飛びかすめ、かっと開いた口から稲妻の息を吐いて壁石を焦げつかせ、慰めとした。 

***

 戦記4巻で、キティアラ様が人間の副官バカリスを”my pet”と呼んでいたときはひっくり返ったものですが(邦訳にはないんですこの言葉!)スカイアなら、まあ…ありか。


“And daily I grow in strength and in might,”

「わたしは日毎に力を貯えつつあるというのにな」

***

 日本語の色の語彙は豊富ですが、「力」の表現は英語に及ばないようです。powerもforceもenergyも。近代物理学を日本に紹介した人は苦労したことでしょうね。


And if his eyes laughed at her, what would those golden eyes of the mage reveal? Not laughter--triumph!

(ソスの眼でさえ嘲笑するくらいだ。かれの金色の眼なら、いったいどんな感情を見せることか。嘲笑どころではなく、勝利の陶酔感だろう!)

“See this you accursed creatures of living death?” she sxreamed shrilly. “You will not stop me! I will pass! Do you hear me? I will pass!”

「これが見えるか、生ける屍と化した呪われたる者どもよ?!」彼女は高らかに叫んだ。
「おまえたちにはわたしは阻めぬ!わたしはここを通るぞ。聞こえたか?無事通ってみせるぞ!」

***

 英語の「意志」と、未来を示す語が同一であることを強く感じさせる台詞。


“I should kill you, you damned bastard!” Kitiara said through numb lips, her hand on the hilt of her sword.
“I am overjoyed to see you, too, my sister,” Raistlin replied in his soft voice.

「おまえなぞ殺してくれるわ、この鬼子め!」キティアラは恐怖でかじかんだ唇で言い、剣の柄に手をかけた。
「ぼくも会えてうれしいですよ、姉上」レイストリンがもの柔らかに答える。

Raistlin smiled, the rare smile that few ever saw. It was, however, lost in the shadow of his hood.

 レイストリンはにっこりと微笑した。ほとんど人に見せたことのない、稀な微笑。しかしそれは、フードの陰にまぎれてしまった。

***

 このrareな表情は、ザク・ツァロスでブープーに向けたのと、あるいはネラーカでキャラモンに祝福とともに別れを告げた時と同じ種類の顔だったんでしょうか。皮肉屋が垣間見せる真実の一瞬。


“Knight of the Black Rose,” continued Raistlin, “who died in flames in the Cataclysm before the curse of the elfmaid you wronged dragged you back to the bitter life.”

「黒薔薇の騎士殿」とレイストリンは続けて、「大変動の炎の中で命を落としたものの、エルフ乙女の恨みの呪いで、死霊としてこの世に留まるを余儀なくされた、とはあなたのことですね」

“Such is my tale,” the death knight said without moving. “And you are Raistlin, master of past and present, the one foretold.”

「よくご存知だな」死の騎士は無表情に言った。「そして、そなたはレイストリン。過去と現在の主にして、予言されたる者」

The two stood, staring at each other, both forgetting Kitiara, who--feeling the silent,deadly contest being waged between the two--forgot her own anger, holding her breath to witness the outcome.

 二人は向かいあったまま、お互いを見つめあっていた。忘れられたキティアラは――二人の間に無言の壮絶な戦いが交わされているのを感じとって――自分の怒りを忘れ、息をつめて結果を待った。

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