2016年4月2日土曜日

伝説2巻p22〜《邂逅》

TIME OF THE TWINS p9
Guiding the church through its daily routines, now that the war was over, seemed dull and mundane. Daily she had prayed to Paladine to assign her some hard task. She would sacrifice anything she vowed, even life itself, in the service of her beloved god.

伝説1巻p22
 もはや戦争も終わり、ただ教会の日課を指導してゆくだけの毎日では、退屈で世俗にすぎるように思えた。連日、彼女はパラダインに、何か困難な課題を与えてもらえるよう祈った。愛する神のためなら何でも、たとえ命でも犠牲にできる、と彼女は誓った。

And then had come her answer.

 そして、祈りは聞きとどけられた。

***

 パラダインは、クリサニアが自覚していなかった真の願いを見抜き、正しくそれを聞きとどけたのですね。まったく、底意地の悪い神です。


Unconsciously, Crysania held her breath. At first she saw nothing, only a shadow of darkness in the doorway, as if night itself had taken form and shape within the entrance. The darkness paused there.

 クリサニアがわれ知らず息を詰める。最初、彼女には何も見えなかった。入り口に暗い影が見えるだけだった。夜そのものが扉口で実体化したかのようだった。闇はそこに立ち止まった。

***

 クリサニアだけでなく、私もここで期待に満ち満ちてました。戦記6巻から約一年後の、レイストリンとの再会に。


“Greetings again, Deathless One,”

「お久しぶりですね。ごきげんよう、不死の方」

“Greetings, Raistlin Majere,” Astinus said without rising. His voice had a faint sardonic note, as if sharing some private joke with the mage.

「ごきげんよう、レイストリン・マジェーレ」アスティヌスが坐したまま答える。その声にはわずかに皮肉めいた調子があり、この魔法使いとまるで何か二人だけに通じる冗談を楽しんでいるようだった。

“Revered Daughter of Paladine,” he said in a soft voice, a voice filled with respect and--even reverence.

「パラダインの聖女どの」若者は柔らかな声でそっと言った。敬意と――さらには崇拝の念さえこもった声だった。

His earlier tone of respect had taken her by surprise, she admitted to herself angrily, but her first weakness was past.

 先ほどの尊敬の口調ですっかり動揺してしまったのを、彼女は腹立たしく認めたが、しかし最初の失態はここまでだ。

“How?” Raistlin asked suddenly, and his strange eyes flared with a strange, intense light. “How will he destroy me?” he repeated. “Lightning bolts? Flood and fire? Perhaps another fiery mountains?”

「どうやって?」レイストリンがだしぬけに尋ねた。異形の眼に見慣れない鋭い光が閃いている。「どうやってパラダインがぼくを滅ぼすのです?」かれは繰り返した。「稲妻で?洪水と劫火で?それとも、また炎の山かな?」

“It is your own doom you mock,” she replied quietly.

「いくら茶化しても、破滅は来るのですよ」彼女は動じず答えた。

2016年4月1日金曜日

伝説1巻p12〜《聖女》

TIME OF THE TWINS p2
This day, as above Afterwatch rising 28, Crysania of Tarinius arrived for her appointment with Raistlin Majere.

伝説1巻p12
<本日、上記のとおり“明の刻・昇二十八”、タリニウス家のクリサニアがレイストリン・マジェーレとの会談をはたすために訪れた>

And yet, cool and pristine and pure as was this private chamber of the historian, the room itself seemed only to mirror the cold, pristine, pure beauty of the woman who sat, her hands folded in her lap, waiting,

 が、年代史家のこの俗塵を離れた孤高の部屋自体もかすむほど、冷然として世俗を離れた至純の美しさをもっているのが両手を膝の上に重ねて待っているこの女性だった。

***

「部屋自体もかすむほど」=” the room itself seemed only to mirror”。鏡像よりもさらにかすんでしまうのですね、聖女様の前では。


She sat in the straight, unconfortable, wooden chair, her clear, bright eyes fixed upon the red-stained fringes of the clouds above the mountains as if she were watching the sun set for possively the first--or last--time upon Krynn.

 彼女は、硬い木の椅子に身じろぎもせずすわったまま、澄んだ明るい瞳を、山脈上に浮かぶ茜に染まった雲の端に据えていた。まるで、クリンの世界が迎える最初の――あるいは最後の――日没を見つめているようだった。

By placing his hand beneath them, he could cease the flow of the drops, but time would go on.

 手を当てれば水滴の落下はとめられるが、水滴をとめても時の流れはとまることがない。

Her hair was black, blue-black, black as the water of a calm sea at night.

 彼女の髪は黒かった。青味を帯びるほどの見事な黒髪は、凪の夜の海を思わせる。

***

 日本語の色を表す言葉の多彩さには、調べるたびに驚かされます。青どころか、藍色のバリエーションだけで十数種類あるんでしたか。その分、他の言語では、色あいを表現するための言い回しの工夫に感心させられます。
 戦記3巻のこのシーンも好きです。

Caramon cried out in horror as he saw Raistlin’s robes, the red robes that marked his neutrality in the world, begin to deepen to crimson, then darken to a blood red, and then darken more--to black.
 キャラモンが恐怖の叫びをあげた。レイストリンのローブが、世に中立を示す赤いローブが深紅に染まり、そして血のような暗褐色に変わり、さらに濃さを増していった――漆黒へと。 
 脱線ですが、ラテン語では赤系統の色を表す語は”ruber”しか見つかりませんでした。赤も紅も緋もこれ一つなんですね。しかしファイナルファンタジー零式の文脈においては” Bellatóres Rúbri”と言ったら「朱の戦士たち」!(脱線終わり)


Crysania searched the man’s ageless face in true perplexity. Then--suddenly understanding--she smiled, a cold smile that brought no more life to to her face than the moonlight upon snow.

 クリサニアは当惑して、年代史家の不老の顔つきを探った。そして――不意に悟って――微笑した。雪に差す月光のように、冷たく硬質の微笑。ほほえんでも彼女の顔に暖かみは差さなかった。

“You don’t believe he will come, do you?”

「かれが来るとは信じていらっしゃらないのですね?」

“Tanis Half-Elven triumpfed with the help of Raistlin Majere,” Astinus said imperturbably. “Or is that a part of the legend you choose to ignore?”

「ハーフ・エルフのタニスは、レイストリン・マジェーレの助力によって勝利をおさめたのだぞ」アスティヌスは動じずに言った。「それともあなたは、伝説のその部分は無視しようとしているのかな?」

“Look, Astinus,” she said softly. “He comes.”

「ご覧を、アスティヌスさま」悠然と彼女は言った。「かれが来ました」

***

 ここまで一分の隙も見せない、大理石の聖女クリサニア様。今後の展開を知りつつ精読していると、冷ややかであればあるほど期待に胸が熱くなります。あの狼狽ぶりやあの台詞、どう表現されてるのでしょう。

言い訳

 お久しぶりでございます。

「戦記」ブログが完了し、こちらの部屋を設定してから軽く一年以上。一体何やってたんでしょうかこの人は。はい、もちろんいろんなゲームやったり本読んだりはしてましたが、ドラゴンランス愛が失せたわけでは決してありません。不用意に、「二次創作上げてから『伝説』編始めます」なんて宣言してしまったせいです。

 前言撤回します。もう放っておけないので、「原文で読もうドラゴンランス伝説”Cries of Dragonlance”」を始めちゃいます。

 二次創作、性別逆転ドラゴンランス戦記『パヴァーヌ』はどうなっているかと言いますと、作者の意思で書けるところはとうに書き上がっております。しかしながら、キャラたちが本音で主張し行動するシーンで、肝心の当人たちが本当のことを言ってくれないのです。書こうとしても、ああこの人たち嘘ついてる、書き手である私を信用してない、胸や腹の中を曝け出してない、というのがひしひしと感じられます。
 そこでときどき読み返しながら一年以上放置してみましたが、こうなっちゃうともう、何かきっかけがないと動きませんね。よし一旦タスクから削除!きっかけもらったら拾ってみることにします。ちなみにこの状態で十年以上放置してから日の目を見た話なんてのもあります。思えば遠くへ来たものです。

 ではでは、こちらでは一年と少し、クリンではあれから二年が経過したパランサスの都、アスティヌスの図書館へ参るとしましょう。

2015年2月16日月曜日

はじめに

はじめましてでない方もこんばんは。

Margaret Weis & Tracy Hickman両氏による"Dragonlance Chronicles"の英語原文と、安田仁氏らによる日本語訳「ドラゴンランス戦記」(以下「戦記」)から、私撰名台詞・名シーンを取り上げ、ついでに妄想感想を交えてご紹介しました

「Words of Dragonlance」は

4ヶ月半にわたる毎日更新の果てに、めでたく6巻完結まで持って参りました。
今後こちらは、「戦記」で取り上げなかったシーンのリクエスト受付や「戦記」にまつわる妄想や二次創作などに使っていこうかと思っております。

続く物語"Dragonlance Legends"、邦訳「ドラゴンランス伝説」(以下「伝説」)は、こちらに場所を移すことにしました。
深い理由はありません。
単に「戦記」第一部、"Autumn Twilight"のイメージで選んだ壁紙やカラーリングが「伝説」のダークな物語に合わない、でも「戦記」はやっぱり前のままにしておきたいというただのわがままです。一つのIDでブログ100個まで作れますからね、Blogger様。

では、今しばらく開幕をお待ちください。